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第39話

「大賀の気持ちはすごく嬉しいし、ありがたいけど、こんなにしてもらうなんて悪いよ。せっかくの休日なんだ。俺のとこに来て料理なんかしてないで、友達と遊びに行ったりした方がいい」 「課長。俺とリハビリするのオッケーしてくれましたよね?」  大賀の鋭い視線に射貫かれ、俺は身じろぎした。 「それはそうだけど」 「俺、中途半端が一番嫌いなんです。弟や妹が拾ってきた動物たちだって、寿命がつきるまで、全部お世話したし」 「いや、俺は犬猫じゃない」  大賀は俺の言葉を無視して続ける。 「どうせ放っておいたら課長、また牛丼とコンビニ弁当だけの食生活に逆戻りでしょ?そんなんじゃ、体調だってよくなりませんよ」 「これからはコンビニでサラダも買うし」  小声で言うと更に大賀の視線は鋭さを増した。 「とにかく俺は課長の心と体がちゃんと健康になるまで面倒見るって決めたんです。中途半端は俺の性に合わない。もし課長の方がどうしても俺に世話を焼かれたくないっていうなら、俺から課長のご両親に医者の指示を伝えて、もっと課長の健康に気遣ってもらうようにお願いしますけど、その方がいいですか?」  俺は顔を真っ青にして首を振った。 「りょ、両親には黙っててくれ」  にやりと大賀が笑う。 「なら、俺が課長の面倒をみるしかないですね。ほら、スープが冷めちゃいますよ」  俺は反論しようとしたが、言葉が思いつかず、ため息をつくとスプーンを手に取った。  スープを掬い、口に入れる。優しい味にほっと息を吐いた。 「いんげんってこんなに甘くなるんだ」 「ポタージュにすると甘みがひきたって美味しいんです。今度ほうれん草でも作ってみますね」 「ほうれん草ってどんな味になるのかな。楽しみ」  はしゃいだ俺は、はたと気付き、スプーンを置いた。  なに次回の約束なんてしてるんだ、俺は。

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