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第42話

 お昼休み。  先を歩く大賀の後をついていく。 「大賀、この前牛丼屋付き合ってくれたろ?今日は大賀の好きなもの奢るよ」  大賀は俺の言葉に小さく頷くと、エレベーターボタンの2階を押した。  玄関は1階だけれどどこかへ寄るのかなと思いながら、俺は黙って大賀に着いていった。  2階、1番奥の部屋の扉を大賀は開けた。  そこは壊れた机や、余剰分のコピー用紙をなどが置いてある倉庫みたいな部屋だった。  部屋の奥まで進むと、古びた机に椅子が2脚置いてある。 「ちょっとぼろいんですけど、公園で食べるよりはましだと思って」  大賀はカバンから風呂敷包みを取り出すと、机に広げた。  中には2人分の弁当が入っている。 「座ってください」  大賀に促されるまま、俺は椅子の1つに腰かけた。 「この部屋、昼休みなんて誰も来ないだろうし、邪魔されずにランチできますよ」  カバンから魔法瓶も取り出した大賀が、付属の蓋に湯気の立つ液体を注ぐ。 「緑茶です。熱いから気を付けてくださいね」  俺に緑茶を手渡すと、大賀がてきぱきと弁当の蓋を開けていく。  お重になっていた弁当箱の中には色とりどりのおかずと、握り飯が詰められていた。 「わあ、これニャンダだ」  おかずのウインナーにはウズラの卵で猫の顔が付けられていた。  目はごま、ひげは海苔とかなり細かいところまで作られている。 「すごい、すごい」  はしゃぎながら写メを取っていたが、はっと気づき俺は顔を上げた。  笑ってこちらを見つめる大賀と目を合わせ、俺は眉を寄せる。 「大賀こんなにごめんな。朝から大変だったろ?」 「ニャンダのはネット動画に作り方が出てたんです。意外と簡単ですよ」 「いや、それだけじゃなくて」  きんぴらにアスパラとチーズの揚げ物、マグロの照り焼きにエビチリ。  それらがぎゅうぎゅうと大ぶりの弁当箱に詰められている。  冷凍食品を使ったとしても文句のない内容だが、大賀はこれを全部手作りしたようだった。

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