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第43話

「きんぴらとエビチリは家で作り置きしてあったものですから、見た目ほど手間はかかっていないんです」  大賀が小ぶりのタッパーを開けると、そこにはプチトマトとカットされたオレンジが入っていた。 「でも、本当にごめん。俺、お前に迷惑をかけてばっかりだ」  俯く俺の髪を大賀が優しくかき混ぜる。 「迷惑なんて思ってませんよ。俺も外食に飽き飽きしてたんで、ちょうどよかったです。これからも外回りがない日は作ってきますから」 「大賀、でも」 「謝るくらいなら『美味しかった。ありがとう』って言ってもらえた方が嬉しいです」  俺は楊枝に刺さったニャンダを手渡され一口で食べた。 「美味しかった。ありがとう」  微笑んでそう言った俺の頭を大賀は再度撫でると、自分も弁当を食べ始めた。    有言実行の大賀はそれから毎日のように弁当を作ってきた。  大賀が外回りの日も気がつくと俺の席に1人前の弁当が置いてある。  俺はその弁当を2階の部屋で1人で食べた。  1人なのに、外でコンビニ弁当を食べている時の様な侘しい気持ちにはならない。  大賀の作ってくれた弁当を見るだけで、俺は心がほっこり温かくなった。    むかえた週末。  俺は大賀にショッピングモールで待ち合わせしようと言ったのに、大賀はうちまで迎えに来た。  来なくて良かったのにと言いながら、大賀と並んで歩けるのが俺は嬉しかった。  ニャンダショップに着くと俺は目を輝かせた。  ショップには結構な人だかりができている。 「可愛い」  俺は目についたニャンダグッズを次から次へとカゴに放りこんだ。  いわゆる大人買いというやつだ。  お会計は5万以上になったが、後悔はなかった。  レジが終わると俺は少し離れたところに立っている大賀に走り寄った。  興奮して待ってくれている大賀の存在を俺はすっかり忘れてしまっていた。

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