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第47話

 元の格好に着替えて試着室からでると、両手に大きな紙袋を持った大賀が待っていた。 「いい買い物できましたね」 「俺はな。大賀は全然自分のコートなんて見てないじゃないか」 「いいんですよ。課長の服選んでいる方が楽しかったし」 「本当か?それよりお会計は」 「ああ、済ませておきました」  事も無げに言って歩き始めようとする大賀の肘を俺は掴んだ。 「代わりに払わせてごめん。いくらだった?」  俺は慌てて財布をとりだした。 「課長、今月俺の営業の成績良かったの知ってるでしょ?これくらいプレゼントしますよ」 「プレゼントなんて。してもらう理由がない」  そう言う俺の頭を大賀が優しく撫でた。 「ありますよ。課長さっき喫茶店で、頑張って耐えたでしょ。抑制剤無しで、ヒートの香りを」  えらい、えらいというように頭を撫でられ、俺は耳朶まで赤くした。 「あれはお前がいてくれたから」 「俺に感謝してるんですか?」  首を傾げる大賀に俺は大きく頷いた。 「当たり前だろ」 「なら、黙ってこの服は受け取ってください。自分の選んだ服を課長が着てくれるだけで俺にとっては十分なお礼ですから」  俺が服を着るだけで礼だなんて大袈裟なことをいうと思いながら、俺は大賀の二の腕に縋った。 「いや、服はもちろん着るよ。せっかく大賀が選んでくれたんだ。でも代金は俺に払わせて欲しい」 「課長は男心を分かってないなあ。俺がプレゼントした服を課長が着るってところが重要なんじゃないですか」  俺は首を傾げた。 「意味が分からない」 「はいはい。課長はそうやってずぅっと鈍感でいてください」 「今、何となく馬鹿にされているのは分かった」  唇を尖らせる俺に大賀は声をたてて笑うと、また俺と手を繋ぎ歩き始めた。

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