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第48話

 それから俺が何を言っても大賀は服の代金を受け取ってはくれなかった。  結局、その晩二人で食べる鍋の材料費を俺が払っただけで、十分だと言われてしまう。  二人でみそ味の鶏団子鍋をつつき、缶酎ハイを一本開けた時点で、俺はかなり酔っていた。  俺は酒に弱く、忘年会ではいつもウーロン茶だったが、今日は飲まずにはいられない気分だった。  スーパーに寄った時、俺は大賀の持っていた買い物カゴにすかさず甘めの酎ハイを放りこんだのだ。  うとうとしながらソファに座った俺は独り言をつぶやいていた。  キッチンには食べ終わった鍋を洗っている大賀。  一緒に片付けると申しでたのに『酔っ払いは座っていてください』と断られてしまった。 「俺が支払うって言ったのに」  大賀は俺の独り言が聞こえたのか、水道の蛇口を閉めると、こちらに近づき隣に座る。  俺の肩を自然に抱いた。  大賀と一緒にいる時間が長くなるにつれて、こいつのスキンシップに俺はすっかり慣れてしまった。 「どうしたんです?機嫌悪いですね」 「俺が服の代金を払うって言ったのに大賀が受け取ってくれないから」 「そんなことですか」  はっと笑う大賀を俺は睨みつけ、顔を近づけた。 「そんなことじゃない。俺はすっごく気になるの」  勢いよく前のめりになったその瞬間、酔いのせいでくらりとした俺は大賀に倒れこんでしまう。 「おっと」  大賀は片手で簡単に俺の大柄な体を支えた。 「だって俺大賀から時間も奪って、ご飯も作って貰って、片付けもできなくて。そのうえプレゼントまで貰っちゃって……」  涙目になった俺はすんと鼻をすすりあげた。 「与えられてばっかりで何も返せないのは辛いよ」 「馬鹿だなあ。課長は」  誰が馬鹿だと目を吊り上げる俺の体を、大賀はよっこいしょと自分方に引っ張り上げた。  間近で見つめられ、俺の心臓がぎゅっと絞られたみたいに早鐘を打つ。

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