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シュガー&ソルト 1 - ②
その手を辿り見上げると
(誰、だろ?)
モヤが掛かった視界でかろうじて分かるこの学校指定のセーラー服と
黒い長い髪
「あっ、手…血が出ている」
「え?ぅ……痛ぇ」
言われて、そうかも……と思った瞬間ヒリヒリする手の甲
転んだ拍子にどこかにぶつかったのか、そのせいで擦りむいたのかもしれない
「立てますか?」
「あ、あ…うん」
俺の腕を取った彼女が起こしてくれた
思ったよりも力強くて、そして起こされた事で目線が同じぐらいなのに気がついた
そんな彼女から
「これ」
使って下さい
そう言って渡されたのは形から言って、きっと絆創膏
「バイキンが入るといけないので」
「あ…ありがとうッ…あれ?あれ?」
有難い
有難いんだけど
でも今の俺は最高潮にブッキー
何度もチャレンジしてるのに目が悪い俺には剥がすのも一苦労で
「あの…良かったら、手貸して下さい」
そんな俺を見兼ねたのか女の子が絆創膏と俺の手を取る
(めっちゃっ優しい~~っ!)
手からじんわりと伝わる体温
柔らかくて優しい手つきに
ドキドキと心拍数が上がってくる
なんか緊張する
「あ、あの…」
意を決して話しかけようとした時
「ナオちゃ~ん手が足りないから早く早く!」
こっちに呼び掛ける女子の声
「あ、うん」
それに反応した彼女
それじゃあ…と呟いて俺から離れていく
え?ウソ?
ヤベッ、行っちゃう!
「あ、ありがとう……俺っ、3年の潮見!」
とっさに口から出た自己紹介
彼女の背中になんとかそれだけ叫んだ
聞こえなかったかも…
そう思った時
「2年の佐藤です」
俺の呼び掛けに応えてくれた事に、心臓が跳ねる
「ナオちゃーーん!」
再度呼ばれた彼女は
お大事に…
そう一言口にして、行ってしまった
「佐藤 ……ナオ、ちゃん」
最後、俺に向かって笑ってくれたような気がする
そして優しかった
イイ匂いもして手がすっごく温かかった
「佐藤 ナオちゃんかぁ……」
高鳴る心臓
浮き足立つこの高揚感
それから絆創膏が貼られた手を、ボケた視界でもってしばらくの間見つめていた
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