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風神雷神 - ②
12年の歳月はこうも人を変えるものなのか……
あの優しく頭を撫でてくれた人は拳が良く似合う鍛えられた体つきの格闘家になっていて
腕っ節は最強、格闘術を駆使し、気に入らない輩を排除する
極度の男アレルギーを発症していた
手を握ろうとすればヘッドバンキング
キスしようと迫れば顔面に膝蹴り
服の中に手を入れれば、腕の関節外され
ナニを触ろうとすれば卍固め
もう、そりゃあ凄過ぎて……
『滅びろ害虫がっ、一匹残らず排除じゃボケェエエエ!』
と、意気込んでは俺を含めて男を吹っ飛ばす
そんな風になった原因を知りたくなるのは当たり前で、雷さんにしつこく聞き出せば苦虫を噛みしめるような表情で教えてくれた事
それは……
『重度の惚れられ体質』しかも『同性限定』
メデューサの目のごとく、雷さんの目を数秒でも見つめると
垂れ流し状態のフェロモンに脳みそがやられ
理性がなくなり
襲いたくて仕方なくなるらしい
だから、サングラスを掛けて予防対策を取ってはいるみたいだけど、たまにウッカリ外したりしたもんなら……
「っ、うぎゃぁあああ!!」
と、その時店の中から叫び声が上がった
まさか、と雷さんの元に走ると……
「チッ…そない、いがって煩いのぉおお!
鼻折れたって死にはせんじゃろーがっぁあ?」
「ひっ、ひぃいいい」
「逃げるなわりゃぁあああッ、人のケツ触った事後悔させちゃるわぁあああ!」
いつもの光景、毒牙に掛かった鼻血を噴出させた男が逃げて行く
小さい頃から人を引寄せる力が雷さんにはあったらしいが、それが酷くなったのは
高校の時、入学した男子校のせいだとか
大多数の同性に囲まれ、そこで力のリミッターが外れた雷さんは大勢の野郎から惚れられ、襲われそうになったり、痴漢は日常茶飯事
その数々の出来事がトラウマと体を鍛え始めるという行為によっての結果…
難攻不落の相手になってしまった
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