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七転八倒 - ③

「ッ、ツ~~…」 『ほぅ、主は甘い香りがするな…』 俺を見下ろす男の伸ばす手が、スルリと頬をなぞる 長く綺麗で白い指 見た目は冷え切った冷たそうな指だが、触れられても冷たくも温かくも無い 『灯火が消え掛かってるか…』 残念そうな表情を見せて男が呟いた なんでそんな顔をするのかも分からない 分からないのに…… 『主は生きたいか?』 もっと分からない事を問い掛けられた (あ…助けてくれるって事か?) こんな所で雪に埋れて身動きすら取れない人を見れば、誰だって『遭難』に結びつくだろう と、いう事なら こんな所から一刻も早く助けて欲しい 東西南北も分からなくなるぐらいどこ見ても真っ白の世界から。 (ん、あれ?なんでだ?) 懇願の言葉を発しようと口を開こうとして焦った 言葉が出ない 『よい、生きたいのだな。ならば我の糧となるか?』 糧? 俺の言わんとした事を理解したのか、今まで無表情だった男の顔に笑みがさす 『ああ。我の力を貸そう。その変わり我の糧となるか?』 糧?だからなんだそれ? その意味が分からないけど、助けてくれるなら と、藁にも縋る思いで 俺は出なくなった声で呟いた 生きたい……と。 『契約成立だな』 笑顔の男が覆いかぶさって来る 両手で顔を固定され、ゆっくりと顔が近づいて そして 唇に柔らかい感触 そこで俺は 意識が途切れた

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