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第62話

「ただいまー!」 「あっ、優磨お兄ちゃんのお帰りだ」 美希がニヤニヤしているのを不思議そうに結月は見つめた。 「拓磨お兄ちゃんの2つ上のお兄ちゃんなの。拓磨お兄ちゃんに比べて、すっごく、チャラいんだけどね....見てたらわかるかも」 「....?」 「すっげー靴!てか、今日のデート、キャンセルになったし、マジ、最悪....」 リビングに入るやいなや、優雅にティーカップを口に運ぶ穂高に気づき、優磨は固まった。 「お、お久しぶりです、穂高さん」 「久しぶり、優磨くん。元気だった?」 「は、はい。穂高さんもお元気そうで何よりです」 穂高の家柄の問題ではない。 端正な顔立ちながら、表情が乏しく、無駄口も叩かない、掴みどころがない穂高が優磨は苦手だ。 思わず、結月は美希の耳元で尋ねた。 「....優磨さんの方が年上、てことだよね?なぜ、敬語?」 「うん。穂高さんと拓磨お兄ちゃん、史哉さんは、同い年だもん。優磨お兄ちゃん、穂高さんには昔からああなの。ダサいよね」 優磨は慌てた様子で腕時計を見た。 「あっ!そういえば、別の子と約束あったんだった!」 「優磨、少しゆっくりしていったら?美希の焼いたパウンドケーキもまだあるし」 拓磨の母も知っているが、わざと優磨を引き止めた。 「いや、間に合わなかったから、あいつ、怒るしさ、行ってくる!」 帰ってきたかと思ったら、バタバタとまた慌ただしく優磨は出て行った。 「約束って、多分、嘘ね。穂高くんが怖いから見え透いた嘘ついて逃げたってとこかしら。 あの子、穂高くんには頭が上がらないというか。正反対な性格からかしら、穂高くんが苦手みたいだし」 「僕が来ると、挨拶だけして、慌てて出て行くし、なんだか申し訳ないですね」 「いいのよ。あの子に穂高くんからお灸据えて欲しいくらいだもの」 拓磨の母も穂高も互いに涼しい顔で紅茶を含んだ。

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