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第63話

「にしても、まだ優磨くん、懲りてないみたいですね」 「そうなのよ。あの子の場合、ある種の病気なのかも。一体、いつ落ち着くのかしら」 実は拓磨、拓磨の母から、拓磨の兄、βの優磨はバイセクシャルで手当り次第に男女と毎日のようにデートをしていることを穂高は聞かされた事がある。 鼻歌をふんふん歌いながら、優磨が部屋から出てくると、仁王立ちし、腕を組む、蔑んだ表情で見つめている穂高に出くわした。 もちろん、穂高は待ち構えていた。 『....優磨さん。あなたはβらしいですね』 『へ?あ、は、はい』 『僕や拓磨はαで、あなたとは違いますが、手当り次第、男女に手を出している、とお伺いしましたが、僕達と違い、男性を妊娠はさせませんが、傷つけてしまうことはあるかと思いますね』 『は、はい....そ、そうですよね....』 『女性を妊娠させてしまう可能性も否定出来ませんよね。僕がなにを言いたいかわかりますか?』 『ひ....避妊、ですか』 更に、穂高は蔑んだ目で冷ややかに優磨の目を見据えたまま続けた。 『....相手を1人に絞れ、て意味ですよ』 穂高の凄みに優磨は怯んだ。 『あ、で、ですよね、僕も今、運命の相手を探していまして....』 『運命の相手?』 『は、はい』 穂高はようやく口元に弧を描いた。 『早めにお願いしますね。被害者が増えないうちに』 『わ、わかりました』 このことは穂高は拓磨の母に報告済みだ。 優磨からも、拓磨の母は、穂高が怖かった、と、このことは知らされていたが、そうなの?で済ませた。 「....いざとなったら、寝ている間に去勢しかないかしら」 「手伝いますよ、お母さん」 実は拓磨の母と穂高のリアルすぎる冗談に過ぎない。 ぎょっとする結月だが他の誰も気にとめる様子はない。 「これ、紅茶の葉が入ってるんだね、アールグレイ?」 「うん!ダージリンのも作ったんだけど」 「結月も食べなよ、ふわふわで美味しいよ」 史哉に笑顔で促され、結月は躊躇いながら、パウンドケーキにフォークを入れた。 「穂高はある意味、うちの番犬みたいなもんだから。親父も注意はするはするけど、お気楽なとこあるし、なにしろ、海外いるしさ」 知られざる穂高の一面に驚愕している結月に拓磨は説明し、ケーキを頬張った。 「でも、俺がここにいる間に彼氏は紹介しろよ?美希」 「うん、わかった...。なんだか、パパみたい、拓磨お兄ちゃん」 口を尖らせた後、パク、と美希はケーキを食べた。

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