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第64話
優磨を除く全員で拓磨の家で夕飯を取った。
料理を覚えたい史哉はいそいそと拓磨の母と笑顔で料理を手伝う姿があった。
「もう遅いし、泊まっていって?」
という拓磨の母のご好意もあり、穂高と結月は拓磨に案内され、二階のゲストルームへ。
「穂高にはこれ。サイズは多分、大丈夫だろ。結月には美希から。XLのパーカー。これならお腹もキツくないだろうから、て」
拓磨からそれぞれ、部屋着も渡された。
「ありがとうございます、美希さんにもお礼、伝えておいてください」
両手でパーカーを抱きしめ、拓磨に頭を下げた。
「美希には明日でも、直接、礼を言うといいよ。困った事があったら、俺と史哉は斜め前の部屋だし、スマホに連絡くれてもいいから」
拓磨は笑顔で自分たちの部屋を指差した。
「ああ。ありがとう、拓磨」
「じゃ、ごゆっくり」
そうして、穂高と結月は2人きりになった。
パーカーに着替えた結月は、膝までの長さで素足が出る裾を引っ張った。
「いいよ、似合ってる」
「で、でも...恥ずかしいし、なんか、スースーするし....」
「いいって」
結月の手首を握ると穂高は自分の膝に座らせた。
「な?心配要らなかっただろ。アットホームな家庭だろ?」
「うん、明るくっていい家族なんだね」
「ああ....子供の頃さ。拓磨の家庭、て、今は亡くなったけど、祖父は政治家、父は日本で教師。格式ある家庭でさ」
遠い目の穂高を、膝の上で結月は見つめた。
「同じαなのに、あいつはいつも笑ってて。人の輪の真ん中にいて。当時の俺は人に関心なんて抱かなかった。なのに、何故か、拓磨だけは違ったんだ」
「....穂高先生が唯一、関心を抱いたのが拓磨さん?」
「ああ。余程の用がなきゃ、誰かに話しかけることもなかったのに。初めて、話しかけたのが、拓磨」
結月は穂高の話しを黙って聞いた。
「気の利いたこと、話せなくって。クラスの人気者、いや、同級生の、か。
そんな拓磨に、緊張して。やっと言えたセリフが、一緒に帰らない?だったんだ」
穂高が微かに笑って見せた。
「拓磨、一瞬、きょとん、となって。すぐに笑顔で、いいよ!て。途中、家に寄ってかない?て言われて、興味津々で拓磨の家、行った。明るく出迎えてくれて...また遊びに来てもいい?て拓磨に聞いたら、もちろん!て笑顔でさ。それから、拓磨と俺は友人になったんだ」
懐かしそうに笑みを零す穂高に結月は自分のことのように嬉しくなった。
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