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第71話

平日の昼間ともあり、人はかなりまばらだ。 穂高は結月の手を引いた。 先に史哉と拓磨が参拝している。 「俺たちも行こう、結月」 「うん」 4人で並び、参拝し、境内を歩いた。 「結月の安産祈願、したかったんだ」 並んで歩きながら史哉は微笑んだ。 「....お前はアホか?」 穂高の真顔に史哉は目を丸くした。 「お前は自分の安産祈願しろよ。安定期にも入ってない癖に」 「はあ!?人の勝手じゃん!僕は結月の安産を祈願したかったの!」 すぐに喧嘩になってしまう二人を拓磨はやれやれと見守る中。 「僕は史哉さんの安産、祈願しました....」 ボソッと結月が呟いた。 「え?そうなの?」 結月が無言で頷く。 「指輪、ここで嵌めよう?人も、ほら、殆どいないもん」 穂高は結月に、拓磨は史哉に、それぞれの左の薬指に指輪を通した。 結月と史哉は互いに安産祈願の御守りを購入したが、交換し合った。 ハラハラと境内にある樹から紅葉が舞い降りる様に結月は釘付けになった。 何処か懐かしいような....遠い記憶....。 「そろそろ帰るか、結月」 「え?あ、うん」 一度、神社を振り返り、結月は助手席に乗り込み、左手の薬指に光る指輪を見つめた。 運転する、穂高の左の薬指にある指輪と同じ、ペアリング。

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