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第102話

「ねえ、拓磨」 「ん?どうした、史哉」 拓磨の自室で史哉が切り出した。 「神社、行かない?」 「神社?」 拓磨が振り返る。 「うん。神頼み、て訳じゃないし、初詣も過ぎちゃったけど。穂高のこと、祈りたいんだ」 拓磨は真顔になり、前を見て、暫し考えた。 「...そうだな。やる事はやっておきたいかも...結月も誘うか」 静かに史哉は頷いた。 「結月が望むなら」 そうして、結月を誘い、以前、穂高も共にした、神社へ車を走らせた。 互いの左の薬指にあるペアリングを交換した場所だ。 「...懐かしい」 「だね」 結月はフードの付いたダウンジャケットにデニム、ニットキャップを被せた咲夜を抱き、境内を歩く。 その後ろを、結月を見守るように、黒のロングコートの史哉と黒とグレーのジャケットの拓磨が、それぞれ、ポケットに手を入れ、歩いた。 拝殿に立つと、結月は咲夜を抱いたまま、しっかりと目を開き、暫し、祀られている仏像を眺めた。 咲夜は親指を銜えたまま、じっとおとなしく結月に抱かれ、結月の瞳を見つめている。 「...結月。咲夜を抱いたまま、参拝は難しいだろう?預かってようか?」 史哉の背後からの声に、うん、と結月は咲夜を差し出したが、 「お前だって、身重だろうが。俺が預かる」 拓磨が咲夜を抱き、そのやり取りに結月は微笑んだ。 前を向いた結月は手のひらを合わせて瞼を閉じ、静かに穂高が早く目覚めてくれる事を願った。 そして、背後の史哉も結月の後ろで手を合わせていた。 結月の為にも、一刻も早く、穂高が目を覚ましますように、と。 「うー、まだまだ冷えるね。何処か、喫茶店でも入ろうか」 「ううん。穂高先生のところに行きたい」 「穂高のところに、て、病院?」 「うん。まだ、咲夜を合わせていないから」 「...そっか」 すると、史哉は自分の首に巻いていた、タータンチェックのマフラーをふわり、結月の首に巻いた。 「...ありがとう」 結月の笑顔に、史哉も笑顔を返した。

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