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第103話
初めて、咲夜を穂高に会わせる為、病室を3人で訪れた。
「穂高先生。産まれたよ。咲夜っていうんだ。勝手に名付けちゃったけど...良かったかな」
穂高に咲夜を寄せる。
ずっとおとなしかった咲夜が怒りを露わにしたかのように、うー、うー、と険しい顔で唸り始め、人工呼吸器を付け、眠る、穂高の頬を小さな手でパチパチと勢いよく、叩いた。
「こ、こら、駄目だよ、叩いちゃ」
結月が抑制するが、必死な形相で唸り、穂高の頬を叩き続ける。
急いで、咲夜を遠ざけたが、穂高を見つめ、今だ、うー、うー、と怒るように顔を顰めている咲夜を必死に宥めた。
「どうしたんだろ、いきなりご機嫌斜めになっちゃったね。さっきまで、あんなにおとなしかったのに」
ぷにぷにな頬を史哉が指で突くが、咲夜の怒りは収まらない様だ。
「パパがいつまでも眠ってるから、不機嫌になっちゃったのかな?」
咲夜にそう話しかけた史哉のセリフ。
結月の脳裏に思いがけず、浮かんだ疑問。
自分が、今世では最期まで明るく、元気に長生きして欲しいと名付けた、穂高の前世の名前。
もし、咲夜に、穂高の前世である咲夜の命が吹き込んだのだとしたら...自分の来世での姿に怒るだろうか。
夢では、意志が強く、気が強そうな咲夜だった。
いつまでも眠っている、来世の自分に大して、どう思うのだろう...。
そこまで考え、慌てて、被りを振った。
我が子が、産まれたばかりの子供が、あの咲夜の生まれ変わりだとはさすがに信じられる訳がない。
たまたま、咲夜が不機嫌になっただけだろう。
「看護師さんに頼んで、ミルク作ってきて貰おうか?」
「いや、鞄にりんごジュースが入っていて...」
「ちょっと、待ってて」
史哉は鞄から哺乳瓶に入ったりんごジュースを取り出し、咲夜の口元に当てた。
「ほら、咲夜。りんごジュースだよ」
咲夜は小さな手で哺乳瓶を払い除けた。
赤ん坊の力なので、弱いものだが。
「お腹は空いてないのか。オムツかな?」
「だとしたら、泣くはずじゃないか?」
拓磨の声に史哉も腕を組み、首を傾げ、うー、と怒りを露わに穂高を見つめる咲夜を眺めた。
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