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第107話
ステーキ、ロールキャベツ、おでん、ほうれん草のシーザーサラダ、ひじきの煮物、ニラのお浸し、豚汁、ごはん。
結月が特別、好物がない、という事を聞き、冷蔵庫にある物だけど、と、史哉に手伝って貰いながら、拓磨の母が丹精込めて、作った手料理を優磨を含め、5人で食べた。
ふと、拓磨の妹の美希がいない事に気付かされる。
「...あの、美希さんは?」
「ああ...美希なら...まだ現実を直視出来ないというか...彼氏んちいるよ、実家だけど」
「...そうなんですか」
あんなに明るく元気だった美希がいないと食卓も静かで寂しく感じた。
「にしても、拓磨には驚いたよな。美希さんの傍にはいますが、絶対、手は出しませんから!て、あの彼氏が宣言したらさ」
「うん、僕もびっくりした」
史哉も食事をしながら微笑み、なんの事だろう、と結月も箸を動かしながら、拓磨を見つめた。
「ああ言うしか無かったんだよ、蒸し返すなっての、恥ずかしい」
「好きな女が泣いてんのに抱かないのか!?傷ついてる時こそ、抱いてやれ!優しくな!ただし、避妊だけは忘れるな!だったっけ?」
史哉がにやにやしながら拓磨を見ると、拓磨は柄にもなく真っ赤になっている。
「俺みたいになんなよ、を付け足すの忘れたな、拓磨」
「うるせー、俺は互いの了承の上で付けなかったの!つか、付けないで、て言ったの、史哉だし」
「うっそだー、僕?僕のせいにする?」
「...ヒート起こして忘れたか。付けないでーっ、て俺に懇願した奴が」
そう言うと、箸で2つにし、掴んだおでんの大根を大口を開けて放り込んだ。
「...そ、そうだったかな」
「へえー、エッロ、史哉くん」
真っ赤になった史哉を横目に優磨が笑う。
「想像すんなよ、優磨」
「とっくに想像したわ。今日のおかずに使う」
そう言うとパク、と一口大に刻んだロールキャベツを放り込んだ。
ただただ、結月はそんなやり取りを眺め、真後ろのベビーベッドで横たわる咲夜も、口元に閉じた手を置いたまま、結月と同じく、ぼんやり眺めていた。
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