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第113話
それから、拓磨の実家から帰宅した結月はたまに無邪気すぎる咲夜に翻弄され、たまに喧嘩しながらも比較的、平穏な日々を過ごしていた。
うー、あー、あー!
突然、一緒に眠っていた咲夜に揺り起こされた。
「んー...咲夜、今、何時...」
電気を付ける事なく、寝ぼけ眼でベッド近くの置き時計を見ると朝の3時だった。
「咲夜、まだ、3時だよ、寝かせて...」
再び、ゴロン、とベッドに寝転がるが、
あーあーあー!
咲夜が懸命に結月を起こそうと遂には額をパシ!と叩いた。
「いったあ...ミルク?咲夜、ちょっと待ってて...」
瞼を擦りながら、ベッドに腰掛けた。
と、その時だった。
置時計の隣に置いていた、スマホがけたたましい音を立てた。
「...こんな時間になんだろ...」
画面を見ると、拓磨だった。
「もしもし、拓磨さん?」
「こんな時間にごめん。早く知らせたくってさ、史哉が出産したよ」
「ええっ!史哉さんが!?」
「うん、早産だったんだけど、史哉も子供も元気だよ」
「今から行きます!」
慌てて、結月は出かける準備をした。
咲夜も着替えさせ、時間が時間なだけに専属の運転手を呼ぶのも気が引ける、と、タクシーを呼んだ。
病室に着くと、赤ん坊を抱いた史哉がひらひらと笑顔で手を振った。
「来てくれたんだ、結月。ありがとう」
「おめでとうございます、史哉さん」
腕に抱いている咲夜が騒々しくなった。
「ミルクかな、ちょっと待って、咲夜」
「和樹はミルクは大丈夫か?」
拓磨が史哉が抱く子供に腰を降り、頭を撫でた。
「かずき...?」
「え?あ、うん。和樹、て付けたんだ。平和の和に樹木の樹」
史哉の笑顔の説明に、結月は呆然とした。
自分の前世の頃の名前だ。
史哉も拓磨も、穂高、結月の前世の名前を知る訳はない。
あーあーあー!
咲夜が必死に腕を伸ばすのを、和樹は指を咥え、丸い目で見つめている。
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