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第114話

「咲夜、和樹が気になるみたいだね」 史哉が咲夜が和樹に腕を伸ばす様子に笑顔だ。 結月はそっと咲夜を和樹に近づけた。 きゃっきゃ、と嬉しそうな笑顔で咲夜はぱちぱちと小さな手で和樹の頬を叩き、和樹に至っては、指しゃぶりをしたまま、丸い目で咲夜を見つめている。 「和樹、おとなしいな。泣かないし、怒らないし」 拓磨がにこやかな声。 暫くすると、和樹も咥えていた指を離し、笑顔の咲夜に、ぱちぱち頬を叩かれながら、和樹もまた、きゃきゃっ、と嬉しそうに笑い始めた。 「あれ、仲良くなった」 史哉が瞬きを繰り返す。 ふと、結月にある思案が浮かんだ。 「拓磨さん、すみません!咲夜の事、預かっててください!」 「え、いいけど、どうした?結月」 拓磨に咲夜を託し、結月は病室を出ると、タクシーを止め、乗り込んだ。 穂高が眠る病院に急いで貰った。 現世で、咲夜と和樹が再会した。 もしかしたら、穂高が目覚めたかもしれない、と僅かな希望を持って。 急いで、病室に入ると、変わらず、人工呼吸器を付け、眠る、穂高の姿に愕然となり、膝まづいた。 「...早とちりか...バカみたい...」 俯き、今にも泣いてしまいそうだ。 「ゆ...づき」 え、と視線を上げる。 人工呼吸器を付けたまま、薄ら、瞼を開け、結月に向かって、手を伸ばす、穂高の姿があった。 「...穂高先生!」 膝まづいていた結月は起き上がり、穂高と視線を合わせ、穂高の手を握った。 穂高も、結月の手を握り返した。 「ごめん、結月...会いたかった...」 「謝らないで。僕も、僕もずっとずっと会いたかった、良かった、本当に良かった...」 涙ながら、結月は握り締めた穂高の手にキスをした。 穂高が人工呼吸器越しに小さく微笑んだ。

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