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第2話

「なんだか逆に申し訳ないな、高校生に奢ってもらうとか」 痴漢から助けてくれたお礼にと、休日、雪翔は雅紀を誘い、繁華街を歩いた。 「なにがいいですか?」 「じゃあ、あれ」 雅紀が指差すのは安さが売りのチェーン店ばかり。 雪翔は目に止まった、寿司屋に入っていった。 「大丈夫なの?」 「大丈夫です!」 とりあえず、財布の中は1万はある。 「にしてもいるんですね、男が男に痴漢なんて」 寿司を頬張りながら雪翔がぼやく。 「だな、これからも用心しろよ?まだ高校入って間もないんだろ?」 「はい、初めての列車での登校で」 「たぶん、俺の出勤時間と被るのかもな。いざ、て時はまた俺が痴漢、撃退してやるから安心して」 雪翔は優しく逞しく思えた。 けして、ガタイがいい、とはいえない、スーツ姿は何処かのブランドなのか細身なスーツがとても似合っていたが、グレーのパーカーに細いデニムの私服の雅紀もまたイケメンだ。 「なんだか、お兄ちゃんみたいです」 「お兄ちゃん?」 雅紀が寿司を片手に笑った。 「うち、上も下も女ばっかで。お兄ちゃん出来たみたいでなんだか嬉しいです」 「そう?うちは男ばっかだからむさ苦しいだけだけど。雪翔みたいなおとなしい弟だったら歓迎するよ」 とても楽しいひと時が過ぎた。 「おはよ、雪翔」 「おはようございます、雅紀さん」 いつしか、朝は列車で2人は挨拶を交わし、並んで登校、出勤するようになった。

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