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花開きの夜に 3(※)

火の番をしていたヤトの元に向かい、彼にも早く休むようにと告げた後で、オラガは一人ふらりと沢の方へと降りていく。 磐座(いわくら)のある場所からそう遠く離れてもおらず、何かあればイオリ達の元にもすぐに駆け付けてやれる。 はぁはぁと、呼吸が荒く乱れてきていた。 思えば、世継ぎを生す際に人間の巫女と交わって以来、久しく誰とも肌を重ねていない。 (たま)に魔羅が疼く時があれば、息子らが眠った後でこうして沢まで降りて一人で処理してきた。跡継ぎのヤトが無事に産まれて以降は、特に巫女を抱いたり他の野犬の雌と交尾をする必要性もなかった。 それなのに―― 「……っ」 イオリの初潮の匂いにあてられて、幾百年ぶりにこの身体が発情を始めた。 魔羅はいつになく熱く太く屹立し、肉襞の蠢く感触を求めるかのようにヒクヒクと小さく揺れる。勃ち上がった魔羅の先端が触れている布服の(へそ)の辺りにはすでに薄らと水じみが広がっていた。 沢のほとりに着き、性急に着物を脱いだ。 元より豪奢なものは好まない(たち)なので、人間が織った布を羽織って紐で留めているだけの簡素な衣しか身に付けていない。 一番活発な成長時期の息子らを連れて山野を駆け回るにも、軽装であるほど都合が良い。 「あ…ッ」 月明かりの(もと)に素肌を晒し、快楽と背徳の混じった甘苦の苦悶でその精悍な面差しを歪めながらオラガは荒く息を吐いた。 掌でそっと陰茎を掴み上下に扱けば、たちまちのうちに先走り程度の白濁が散った。 ふるりと腰を震わせると、荒い息のままで腰に着けていた布袋の中から粘土で焼いた小さな容れ物を取り出す。 指先も覚束無いままに蓋を開け、中に入っていた花油を自身の掌に塗り付けた。すっかり硬く勃ち上がった魔羅を右の掌で掴み、腰を揺らしながら刺激を与えていく。 陰茎を強く握って、ぬるぬると花油を滑らせながら扱くたびに腰の辺りが甘く疼く。魔羅はガチガチに太く硬くなるのに、切ない疼きばかりでなかなか射精感には繋がらない。 「は…あ、あッ。ぅ…っ」 ふとイオリから漂う雌の匂いが鼻先を掠めた気がした。 その途端、張り詰めていたものが地面に勢い良く吐き出される。二度目の吐精は深い快楽をもたらし、オラガも堪らずに背を丸め身体をびくりびくりと痙攣させた。 多量の白濁を出しても熱も疼きも治まらない。硬いままの魔羅を、地面に吐き出した白濁の上にずりゅずりゅと擦り付ける。 自身の精液から立ち篭める雄の匂いが更に発情を煽っていく。 日に焼けた頑丈そうな体躯はじっとりと汗ばみ、時折吹き抜ける春の夜風が肌に触れる度に、ひんやりとした涼感を残す。 吐息混じりの荒い呼吸を吐きながら、オラガは夢中でぬるぬるとした白濁の上で魔羅を擦り続けた。(たま)に触れる粘性の土が小気味良い刺激を亀頭に与え、その度にオラガの背には稲妻が走るような快楽があった。 こんな姿を息子たちに見られる訳にはいかない。早々に気を落ち着かせて彼らの傍に戻ってやらねば――と思った刹那、オラガの秘孔にぐにゅりとした違和感が走った。

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