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慕情の行く末 4(※)

「いやぁぁぁっ」 「大人しくしろよ、こら」 「んんんっ、ん」 馬乗りになった男の片手が、小さな口を塞いだ。上手く息も吸えず、イオリは余計に暴れようとする。 (怖いっ…オラガ…!) ぼろぼろと涙を零しても、男は容赦なくイオリの首元や鎖骨の辺りを舐めまわしていく。嫌悪感ばかりの愛撫に、身を捩って必死に抵抗しようとした矢先、布服を全て剥ぎ取られた。(あらわ)になったイオリの身体を見て、男が小さく嘲笑を漏らす。 「へえ、両性具有か。これまた珍しいもんを見つけたな。売れば金になるか…」 「んんっ」 「…にしても、何でこんな山ん中に一人でいたんだ?棄てられたのか、お前」 「…っ」 蒼白になった顔でぴたりと動きを止めたイオリの全身を値踏みするように見つめると、男は下卑た笑いを口元に浮かべる。 「棄て子なら、好きにしたって構わねぇよな。一回やって具合いをみてみるか」 「んん…ぅ」 「はっ。そんな強請(ねだ)るような顔して、よっぽど飢えてたのかよ。こんだけヤラシイ匂いさせちまって」 「違…う。んぁ…ッ」 「ああ、悦い声が出るじゃねぇか。流石にホトはキツイな…」 「ああアッ、指抜いて…いやぁ!いやだっ…オラガ…っ!」 「ちっ。うるせぇなぁ」 「…っぅ」 ぱん、と軽く頬を(はた)かれて、イオリは全身の力をくたりと抜いた。 そのまま、男は剥ぎ取った布服をイオリの目元に巻き付けて目隠しをする。 視界を奪われ、抵抗する気力も急速に無くして、ただぽろぽろと涙を零しながら男のなすがままに身を委ねた。 (どうせ棄て子だったんだから。このまま誰にも愛されないなら…もう、どうなったっていい) 自分の居場所も、役割も、生きる意味すら見失いかけてイオリは全てを放棄しかけていた。 男の指が無理矢理に二本()じ込まれたホトが引き千切れるように痛んだが、どこか現実味がないままだった。 (ああ、そういえばオラガは僕の中には挿入(いれ)なかった。女の身体じゃないから、興味なかったのかな――) 「ひぁッ」 不意に胸の突起にむしゃぶりつかれて、物思いに耽っていたイオリはびくりと背を仰け反らせた。べろべろと先端を舐められるたびに、ホトに甘い疼きが走る。 「あっ…やぁ」 「悦いか?」 「ああ…オラガ…。いやぁ…んんっ」 「おっ、急に濡れ出したな。お前、乳を吸われるのが好きなのか。へへっ、やらしいなぁ。魔羅も固くしやがって」 「違ぁ…んんッ」 「ああ、やべえ。我慢ならねえ。今すぐ滅茶苦茶に……グァッ」 短く呻くような声と共に、ドサリと何かが地面に倒れる音がした。イオリの上から男の気配が消え、代わりに温かな掌が彼の頬に優しく触れた。 「イオリ…!無事か、イオリ!」 「…オラ、ガ…?どうして…」 「起きたらお前の姿がなかったから、慌てて匂いを辿ってきたんだ。すまない、遅くなって。もう大丈夫だ」 頭上から降ってきた愛おしい声に、不意に目頭がじわりと熱くなる。 目隠しを外され、安堵して気を失ったイオリはそのままオラガの腕の中に優しく抱きとめられた。

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