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9day・sat 3/20
(意外に上手くいったな……)
事前にネットでやり方を調べてたし、初体験の時よりよっぽどスムーズだったかも。すごい締まりが良くて、女性より数段気持ちよかったし。
ベットに眠っている深森さんの白い横顔を見ながら思わず笑ってしまう。全然貫禄は無いが、6才歳上の深森 理 はシステム開発部の部長で会社の創業メンバーの一人だ。
社長と専務、深森さんの3人で大学在学中に創業したうちの会社『インフォーマル』は創業10年あまり、現在社員40名ほどで小規模ながらもアプリ開発や、ガジェット販売、スープ屋なども多展開している、どの部門も一度も赤字を出したことがない優良企業だ。
深森さんは幹部になるのを嫌がり渋々部長職を受けたらしい。出世欲は全くなく、仕事さえ与えておけばご機嫌のプログラムに欲情する変態なのだと辛口の八魂 専務に聞いたことがある。
いつからだったか開発部に行くと彼からの不思議な視線を感じるようになった。それは好意でもなく悪意でもなく、そう……なにか自分の事を、おもちゃか何かでも見てるみたいな視線。
多分こいつは自分の正体に気づいてる……幾度か開発部に足を運ぶうちに、それは次第に確信に変わった。
初めての感覚。自分に空いているどうしようもない、この大きな穴を見ているんだ。そしてそれに興味を示している。
ゾッ……っと背筋が凍る感じがした。鳥肌が立って足元からすくわれる感覚。
なんだろう……恐怖と、興奮と、今までにない感覚。彼と深く関わりたい。とりあえず自分を好きになればいい。自分でも理解できないこの感覚の正体をどうしても見つけたかった。
「早く俺に夢中になって……2年間、楽しい恋愛をしましょう……」
眠る深森さんの頬を撫でながら耳元で囁いた。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
(自分が信じられない!!!!)
目が覚めると知らない部屋のベットの上で、隣に桐生が寝ていた。確認したくもないが、2人とも全裸だ。見回すと青を基調にしたシンプルで清潔な部屋。多分桐生の家だろうな……記憶が、記憶が曖昧だけど……! 俺は合意してこの部屋に来たこともセックスしたことも断片的だが覚えている。
何より体が、あそこが、痛いなんてもんじゃなかった。日頃使っていない筋肉を使った疲労感が半端ないし、体中に残る赤い跡。どう考えても事後だ……。
横に寝ている桐生を起こさないように、そうっ……とベットから這い出すと、脱ぎ散らかした服をなんとか着て、鞄を探して重い体を引きづり逃げるように部屋を出た。
冷静に、冷静に考えないと。とにかく今は家に帰りたい!
ここがどこか解らないままタクシーを拾い自宅に逃げ帰った。
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