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214day・mon 10/11

「S級エラーです!」  桐生が顔色を変えて開発部に飛び込んできた。  リリースまで1ケ月半、このタイミングでのS級。  開発部の全員がざわついた。  新生堂の専属デバッガーですら見つけられなかった。エラーを見つけたのは山田だった。 『すっごい可愛いロボにゃん作ってたのにーー!!』  テスト機で遊んでいた山田は最後の最後でデータが画面から溶けたと、半泣きで桐生に連絡して来たらしい。  うわ……山田には悪いが、これが初めてプログラムを組んだ子供じゃなくて良かった。エンジニアを志すどころか危うくトラウマを植え付けてしまうところだった。 「みんな今やってる案件、緊急なもの以外全て止めてくれ。ソース分割して割り振るのでチェック、疑いのある箇所を抜き出してプリントアウトしてこっちに持ってきて」  開発部にいる全員に指示を出す。 「は、はい!」  数分後からプリンターからの出力が始まった。次々と吐き出される紙が自分の元に運ばれてくる。それを机に数枚づつ並べソースを指で追いながら、チェックする。 「これ」 「これも……」  赤いチェックを入れたものを他の社員が横から取って自分のパソコンに走り、再度確認を始める。皆無言でその作業は粛々と続いていた。 「リリース延期の可能性は?」  すっかり存在を忘れていた桐生が遠慮がちに後ろから尋ねてきた。    ああ、そうだな。営業には見込みスケジュールを伝えておかねばならない。  最悪の場合を想定して各所に手配に回らなくてはならないだろうからな。  だがリリースの遅延は絶対にさせない。 「ない。全て予定通り進行しろ」 「……はい。了解です」  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・  全てのチェックが終わったのは朝方4時すぎ。終電前には部下は帰してしまったので、修正作業は終わってないが、原因はほぼ特定できた。修正して再度デバッグにかければ大丈夫なはずだ。  多く見ても進行の遅延は1週間。前半にハイペースで進めていたのが幸いした。リリースには影響はないはず……安心したら流石に眠くなってきた。  始業するまで、3時間くらい、少し寝れるな……。  吸い込まれるようにソファーに倒れ込んだ。

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