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282day・sat・12/18

 週末はどちらかの部屋にいることが多くなった。  金曜日の帰りにどちらかがスーパーで食材やデパ地下で惣菜を購入して帰り、たいてい桐生が夕食を作ってくれた。仕事が立て込んでいる時は待ち合わせして外食。もしくはテイクアウトや宅配を頼んで酒を飲み、ゆっくり過ごす。無理のない心地いい生活だった。  正直、桐生との付き合いは本当に楽だ。  これが男同士だからなのか。彼の性格によるものなのか。  まずプライベートと仕事のことで揉めることはまずない。これは同じ会社にいてお互いの仕事内容をよく理解していることもあるのだろうが、どんなに仕事が忙しくて会えなくても絶対にクレームは来ないし、むしろ労ってくれる。  そして桐生は想像通りというか、自分のプレゼン通りというか、期待を裏切らず衣食住完璧だった。潔癖症だというつもりはないが、整頓された無駄のない部屋で過ごすのは心地いい。  飲み込めばそんなに悪くないし、むしろ快適だ。  ただなんだろう。桐生はそれで楽しいのだろうか。俺がお前を好きになれば、それが嬉しいのだろうか。  ずっと、ずっと(いびつ)だ。  この(ゆが)みが気持ち悪い。  この歪みに目を背けていると、とんでもないことになる。そんな予感がしてならないのに、この心地いい状況で、俺はそこからずっと逃げている気がする。 「年末年始はどうするんですか?」  思考を遮るように桐生が聞いてきた。  暖かいルイボスティーが差し出される。 「んーー田舎に顔出す位かな? 妹の子供と従姉妹とかにお年玉配りに行かないとだし……」 「田舎、秋田ですよね? ……迷惑かけませんから俺も連れて行ってくれませんか? 近くのホテルにでも泊りますから」  意外なこと言い出したな? 「……お前は実家帰らないのか?」 「うちは正月集まらないんですよ。母親も海外だし」  そうなのか。なんか自分の実家が当たり前に正月に集まる習慣だから不思議な気がするが、まあそういう家もあるよな。 「あ、ダメなら大丈夫ですから」  断ったら、お前ひとりで正月何してるんだよ。 「……や、いいよ。来いよ。ただ騒がしいぞ。親戚大勢集まるし」 「ありがとうございます。お邪魔しないようにしますから」  桐生は家族の話になると途端に壁を作って触れさせない。こっちも詮索するつもりはないが、やっぱり何か複雑な事情でもあるんだろうな。 「あ、あと来週ちょっとイベントに出て欲しいんですが……」 「またかよ? もういいって言ったろ?」 「すみません〜〜クリスマスイベントなんですよ。おもちゃ業界では年最大の売り上げが上がる日です。新生堂さんがクリスマスまでに増産だいぶ頑張ってくれたのでお手伝いしたいんです」 「まあ、いいけど……何するんだ?」 「ありがとうございます。銀座の家電量販店での販売です。社長もご一緒ですよ」  桐生は何か含みのある顔をして笑った。  怪しい……。

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