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456day fry 6/10
「ごめんねーーそれ俺のせいだよね? さっちゃんのこと無理に連れ出したから相手の人を怒らせちゃったんだよね?」
そう言って山田は旅行を1泊に変更して翌日早めに家まで送ってくれた。
「山田のせいじゃないよ」
「ひさびさに名前で呼んでくれたーー! いつでも相談してね! 友達だからね!」
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
嬉しそうに叫びながら帰って行ったけど、まさか山田に恋愛相談する日が来るとはなーー全部話したわけじゃないけど、いろいろ吐き出せて、少し気持ちが落ち着いた。
子供好きで、良くボランティアで施設訪問とかしているからなのか、山田は意外なところからの指摘をしてきた。
『さっちゃんさーー愛情確認行動って聞いたことある?』
『適切な愛情を受けられなかったこどもによくある行動なんだけど、どれだけ自分が酷いことをしても大人はそれを許してくれるか、本当に自分を守ってくれるべき存在なのかあらゆる手を使って試してくるんだよね。まるで赤ちゃんが毎日泣いて親を寝かさないような行為を大きくなった子供が全力で容赦なくしてくる。里親さんなんかだと、親も子もへとへとになってやっと乗り越えて親子になって行くんだって』
『相手のことは知らないけど、そういうのに近いんじゃないのかなーーって気がしてる』
『小さなこども相手でも死にそうになるほど大変らしいのに、大人相手じゃ相当しんどいと思うよ』
『俺の口出すことじゃないけど、さっちゃんのこと心配だよーー』
山田が答えてくれたことを反芻しながらネットで調べると、気分の悪くなるような壮絶な体験談や、症例がたくさんあった。あの傷に原因があるのか、家族に問題があるのか、もしくはそれも違って桐生の本来の性格なのか……。
……思いつくことはある。
家族のことになると途端に壁を作ること。
そして、桐生の求めることがいつもひとつだけだったこと。
自分への愛情。
「1番愛してくれる人と付き合う」
桐生が最初に言った言葉の意味がやっと解った気がした。
あいつが欲しいのは、自分を1番愛してくれる人間。
あの容姿だ。モテないはずがない。
今までの彼女は桐生の求める基準を満たさなかったんだろう。
そりゃあ難しいだろうな。無償の愛を求められるなんて……。
幼少期に虐待を受けたり、愛情を受けられなかった子供は異常に空気を読むことを覚えることがあるらしい。弱い子どもは、大人の庇護がなければ生きていけないからだ。
誰が自分を助けてくれるのか。誰が自分を傷つけるのか。誰が自分を愛してくれるのか……信用に足るのか、裏切るのか。生き残るために全神経を傾けるのだろう。
誰が自分を好きなのか解ると言っていた。
あの高い営業スキルもその体験が生きたからなんじゃないか?
そして、あいつはその研ぎ澄まされた独特のカンで俺を見つけたんだろう。
現時点で1番自分を愛してくれそうな人間を。
すげーな。本人も気づいていない気持ちまで読むなんて。
もちろん、全部想像でしかないけど……。
……あと1年。いやもう11ヶ月くらいか……。
途方もなく長い気もするし、ほんの少しの時間のような気もする。
(死にたくなるほど辛い……)
……か。
でも、もう俺からこのゲームを降りることは無理だ。
桐生お前、一体、何すりゃ気が済むんだよ……。
あの傷の本当の理由。
もう一度、聞いたら教えてくれるんだろうか……。
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