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662day mom 1/2

「これ帰りに食べて。またいつでもきてね。一人で来てもいいわよ」  車で秋田駅まで送ってくれた母さんは、別れ際しばらく会えないだろう息子の俺には目もくれず、桐生に向かって優しくそう言うとデカいおせちみたいな弁当をくれた。 「なんだよそれ。意味が解らない」 「何よ。ろくに連絡も寄越さない冷たい息子より、話上手で綺麗な男の子の方が楽しいにきまってるでしょ? 私独身だし」 「今度はプロポーズに来ますね」  揉めている横から、調子よく桐生が答えた。 「あら! やだ! 楽しみに待ってるわ!」  何顔赤らめてるんだよ!  こっちが恥ずかしいわ!  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・ 「ほんとお前口が上手いな」  新幹線の中、桐生は機嫌良く弁当を食べていた。 「妬いてるんですか?」 「そんな訳あるか!」 「結構本気ですよ。魅力的すぎて、俺浮気しちゃうかも」 「……それだけは勘弁してくれ」  まぁ解ってるけどな……俺はふつーの母ちゃんだと思っていたけど、お前にはふつーじゃないんだよな。当たり前のように母親って子供のことを想っていると思っていたけど、そうじゃないこともあるんだな。そしてそれがどれだけキツいことかも。  年が明けてしまったな……。  東京に戻る新幹線から一緒に見る景色もこれで最後だ。  それに母さん、気に入ってくれたのに悪いけど、もう桐生を連れて行くことはないよ。  これだけじゃないな……あと3ケ月余り、何もかもで最後が増えていくんだろう。  突然切れる関係よりかは、何もかもを大切にできるかもな……。  ズキリと胸が痛くなる。  ダメだな……綺麗事を並べてもやっぱり辛い。  この2年間、俺にとって驚くようなことばかりだった。  だが、後悔はない。俺は初めて人を愛するという体験をしたと思う。  どんな歪な繋がりでも、俺は本当に桐生のことが好きだった。  お前に会わなかったら、70点くらいの気持ちで恋愛をして結婚をして子供を作って一生を終えていただろう。それが不幸だとは思わないけれど、自分ではどうしようもない激しい感情や醜さを知ることができた。  お前の暗闇を覗いた時、本当に幸せになって欲しいと思ったよ。  本当に、自分よりもお前が大事だよ。  そんな気持ちにさせてくれたお前に感謝してる。  心から幸せになって欲しいと願ってるよ。  俺がそばにいるのはお前にとっての正解じゃない。  辛いがそれが2年間で得た答えだな。

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