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730day sat 3/11 ※R18

 桐生の誕生日。惣菜やケーキなど色々買って部屋に寄った。このところ俺の部屋で過ごすことが多かったから、久しぶりだ。  昨年も同じように、浮かれて買い物をしてからここに来た。あの幸福と絶望の両方をいっぺんに味わった長い1日を思い出して思わず笑ってしまう。あれからもう1年が経ったんだな。  そして、今日がお前と過ごす最後の日だ。  明日からは、こんなふうに一緒に食事をして酒を飲む。こんな他愛のない事すら許されない。  桐生は目の前で機嫌良くワインを飲み、つまみを食べている。もう日常になってしまった幸福な風景。それを全て捨てるんだ。自分の手で……。  ここに至ってもまだ俺は揺らいでる。その残酷な結末は俺が気持ちを覆せば訪れない。  今なら間に合うと頭の中でずっと響いてる甘すぎる誘惑に眩暈がした。  今日もきっと長い一日になる……。  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・ 「俺もお前と同じプレゼントにしたよ。お前が望むことを言ってくれ」  甘ったるいケーキをつまみにしながらワインを流し込みながら聞いてみた。さっきから吐くほどではないが、何を口に入れても味がしないし酒も水みたいだ。 「……じゃあ、俺のこと好きって言って下さい。たくさん。あと名前、呼んでください」  桐生は考える間も持たず返事をした。 「そんなことでいいのか?」 「俺には1番大事なことです」  そうだな……最初からお前の望む事はそれだけだった。 「誕生日おめでとう。お前が生まれてきてくれたことに感謝してる。お前が生まれてきてくれなかったら、会うことも出来なかった」  お前には辛い出自だったかもしれない。でもそれがなかったら俺たちは出会えてなかった。 「愛してるよ、尚。誰よりも、自分よりもお前が大事だ」  本当に心から愛してる。今日しか言えないから、もう何も繕えない。 「理さん……」  桐生は嬉しそうな、複雑な顔をしながら俺を抱きしめた。  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・  こんな日に桐生は、まるで初めてみたいに優しい。  もどかしい……何も考えたくないのに。 「なんで、出さないんだよ。俺の中は、そんなに我慢できるくらいなのか?」    足で桐生の腰をグッと引き寄せて喉元に噛みついた。 「……あぁもう、知りませんよ」  雄を感じる低い声。足を掴むとそのまま体重を掛けて桐生が奥まで入ってくる。今まで以上に深い。  すぐに桐生の精液が体に流れてきたのがわかった。  気持ちいい……。 「こんなに締め付けられて、俺がどれだけ我慢してると思ってるんです」 「…し…なくていい……入れてくれ。何回でも…」  言うと、桐生の動きが速くなって強く打ち付けられた。 「好きだよ。尚。もっともっと強くしてくれ……」  幾度も幾度も入れられて、桐生の精液が溢れてシーツを汚している。  女だったら絶対妊娠してる……。  悲しくて、くだらない、たらればだな。  女だったら絶対にお前を諦めてなかった。 「手ぇ……繋いでください……そのままゆっくり入れて」  向かいあって桐生の上に乗り体重をかけ、自分から繋がる。  圧迫感はあるが、入ったままの桐生の精液が潤滑油になり痛みは感じない。  深く入れて、また浅くなるようにと腰を上下する。  桐生が気持ちいいところにあたるように、強く弱く……。  首元に手を廻し耳元でずっと『愛してる』と囁きながら。  お前の切羽詰まった顔が堪らない。  喉元に吸い付くと、また体に温かい物が流れてきた。  これで最後。この匂いも。体温もこれで最後。  いやだ。  間違っててもいい。  この腕を離したくない。  下から揺さぶられると、衝撃で桐生の体の上に涙が落ちた。 「すごい完璧。体も心も……」  嬉しそうな桐生の顔。そうだよ。お前が暴いた、これが俺の本性だ。お前を愛してる……離れたくない……本当は縋って泣いて1分1秒でもそばにいたい。  お前の未来なんかどうなってもいい。  女性と子どもと一緒に笑っている桐生の幸せそうな姿が脳裏に浮かんだ。それを望んでいるはずなのに、お前を幸せにできる相手が羨ましくて、嫉ましくて……胸が焼けるように苦しい。  いつか、お前は本当の『愛している』を美しい女性に言うのだろう……。  いつか、かわいい子どもを抱きしめて心から『愛している』と告げるのだろう……。 「泣かないで……ごめんね。大丈夫。大丈夫だから……」  嬉しそうな桐生が宥めるように頬を舐めて涙を拭き取った。  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・  眠る桐生の顔を覗き込んだ。  眠りたくない。ずっとこのまま見ていたい。  お前が明日何を言うかは、わかってるけど……。  俺は頷く事は出来ない。  明日、俺はお前の手を離すよ。  大丈夫だ。きっとお前は本当に自分から愛せる人を見つけられる。  だってあんなに激しく母親を愛しただろう。  子供とその母親をきっと心から愛することができる。  愛してるから別れるなんて、つまらない恋愛の歌みたいなことほんとにあるんだな……。つまらない恋愛の歌詞みたいに、このままずっとずっと朝が来なければいいと思ってるよ。

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