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928day mom 9/25

「営業の桐生さんのお父さん亡くなったんだって……」  女子社員が話している会話がふと耳に入った。母親より、だいぶ年上の父親だと言っていた。葬式では、もちろん母親に会うよな。  どんな気持ちでいるんだろうか……罵り合ったりする仲なのだろうか。もしくは全く会話もしないような……それでも会いたいと思うんだろうか……思うよな。  あんなにひどい仕打ちを受けても、自分の身を傷つけてまで庇った母親だ。 (少しくらいあいつに優しくしてやってくれよ……)  俺が思うことじゃないけどな……と思いながら、頭の中に浮かぶいつか見た綺麗な写真の女性に話しかけた。  ・・・・*・・・・*・・・・*・・・・  程なくして、桐生が退社するという話が入ってきた。父親の会社を継ぐことになったらしい。  もう社内で姿を見ることもなくなる。とうとう完全に縁が切れてしまうな……。  でもその方がいい。ずっと同じ会社にいて、桐生が誰かと付き合ったり、結婚したりするのを間近で見るのはやっぱり辛いだろうから。  しかも、あの百貨店グループだって言うから驚いた。母親の実家の店を助けたって言ってたし、そこそこの事業家なのだろうとは思っていたがそこまでとは思っていなかった。  それこそ結婚しない訳にはいかないだろうな。やっぱり、これで良かったんだ。もしも本当にお互い好きだったらもっと悲惨なことになっていた。  お互いか……それは杞憂だな。  いまだに引きずっている。自分の中の未練と、願望に思わず笑ってしまう。  どうしてこんなにあの男が好きなんだろうか……ほんとに恋愛って理屈じゃないんだな。30過ぎにもなってやっとわかるとはな。  頑張れよ。本当にお前が幸せになることを祈ってるよ。

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