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【730days番外編】最初に投げた小石の行方について…
「俺もう一つあなたに謝らないと、いけないことがあって……」
桐生は意を決したように話し始めた。新しい職場にもだいぶ慣れたらしく、ここのところ週に2、3回は俺の家に顔を出している。
「殴っても蹴ってもいいです! 会えないのも、いっ……1週間くらいなら……我慢します。でも絶対に俺のこと捨てないって約束してください!」
「なんだよ。それ。そんな保険をかけた謝罪があるか!」
「そ、そうですよね…でも捨てるのだけは……」
くそう。子犬のようにこっちを見やがって。
「なんだよ? そんなにデカイことなのか? 今更、何言ったって驚かねーよ」
そう言ってやっても桐生は不安そうな顔でこっちを見ている。
「……あなたにはもう絶対嘘をつかないって決めたから、言います! ごめんなさい。俺初めてあなたを抱いた時、お酒の中に薬を入れました」
言うと桐生は叩かれる前の子供のように目を伏せてブルブル震えている。
……実は、まぁ、そうかも……とは思っていた。あの時はパニくってて、わかんなかったけど、よくよく考えたら俺、秋田の男だし、結構酒強いんだよな。緊張して疲れてたからってあの程度の酒で、あそこまで泥酔するわけがない。
「捨てない?」
「捨てないよ。つか捨てる捨てるって言うなよ」
桐生は嬉しそうに俺を見上げた。可愛い。
なにをしても俺はお前を許すと決めているからいいんだけど……しかし、腑に落ちないところはある。
「出せ」
「え?」
「まだ持ってるんだろう? その薬出せ」
「は、はい」
慌てて桐生は瓶に入った薬を机の上に置いた。
「……あ、あの……合法のですよ」
当たり前だ!
「飲め」
「えええぇ?」
桐生は驚いた顔をして後ずさったが、無言で顔を眺めていると意を決したように蓋を開け薬を飲み込んだ。桐生は俺より酒が強いから理性が飛んだところをほとんど見たことがない。どんな感じになるか、ちょっとだけ興味があった。
「効くまでしばらく時間かかるんだろ? とりあえず食事でもするか」
食事をしながら、最初はそわそわと挙動不審だったが、しばらくするとだんだん楽しそうに笑い始めた。桐生はいいけど、自分がこんな姿、晒してたのかもと思うとちょっとドン引く。
「深森さん」
「なんだ?」
「だーーい好き〜〜」
とろんとした顔でじっと俺を見ている。
う、なんだこの可愛い生き物。
「手ぇ出して……」
促すように左手を出してきた。
(……?)
手を出すと手首を掴まれ引き寄せられた。
口もとによせると子供のように俺の親指を舐め始める。
「おま、なにして……」
引っ込めようとしたが、がっちり掴まれたままだ……。
「ダメ……全部舐めたいんです」
人差し指、中指と順番にまるでアイスでも舐めているみたいに舐めていく。
「すっごく美味しいです」
そんな訳あるか!この恥ずかしい状況をどうしたらいいんだ。
「全部食べちゃいたい」
ブレスレットの上から手首を軽く噛まれた。
甘ったるい事を言いながら、俺を見る桐生は理性が飛んだ雄の顔をしている。
しまった!……とさっきまでの好奇心を後悔したが遅い!
そのまま手首ごと体を引っ張られると、抱き上げられた!
これって、あれだよな!お姫様だっこってやつ!!!
……なんて冷静に分析している場合か!
「ちょ! 降ろせ! 降ろせよ!」
「危ないから暴れないで下さい! 大事な深森さんを落としたらどうするんです」
ダメだ……完全に薬でぶっ飛んでる。仕方なく首にしがみつくと、そのままベットに連れて行かれた。
「さっきの続きねーー」
言うと手首からまたぺろぺろ舐め始めた。全身舐める気か!?
「意外、こんなところ感じるんだ?」
俺がピクリと反応したところを執拗に舐めてくる。
くすぐったい。気持ちいい。
「あなたのいいところ、ぜーーんぶ覚えますからね」
「そんなことしなくていい!」
まるで実験でもされてるみたいで恥ずかし過ぎる。
「ダーーメ! 深森さんのことぜーーんぶ知りたいんです!」
額や頬、目元まで顔中舐めてくる。大型犬か!
「口開けて」
言うとおりにすると、そのまま舌で口の中まで舐めまわす。舌に吸い付いたり、歯列もくまなく舌で撫でられた。
(この変態ーーー!)
「変態じゃありません!愛情です!」
こいつまた変な勘で応答してるし!
薬でやられてるくせに、ずっと真顔なのが怖すぎるわ!!!
「反応してる」
そりゃあ、そうだ。これだけ体中舐められたら反応するに決まってる。
勃ち上がっているものをぺろりと舐められた。
桐生はやりたがるが、どうしてもこれだけは恥ずかしくて慣れない。
しかも、いつもと違う。どこがいいか確認するように隅々まで舐めてくる。
「こうするのが好きなんですよね」
先を舌で押して刺激してくる。
「あと横を上下に人差し指と親指で刺激するとすっごく気持ち良さそう」
ずっと自分の体の反応を実況中継されているみたいだ。
しかも喋りながら舐めるから、動く唇と吐息が触れていつもより気持ちいい。
「すごいパンパン。俺に飲まれるのが恥ずかしくて限界まで、我慢しちゃうんだよねーーでもどうせ出しちゃうでしょ? だったら諦めて、いっぱい出してーーぜーんぶ飲んであげるから」
あーーうるさい! 聞きたくない!! 恥ずかしさに体を捻ると、俺のものを楽しそうに舐めている桐生と目があって……途端に出してしまった。飲まれるどころか桐生の頬に思いっきり、か、かけ……!
……消えたい……。開放感と恥ずかしさで枕に沈んだ。
「もったいないなーー」
桐生は手で拭って猫みたいにペロペロと舐めている。
何言ってんだよーーー!!!
恥ずかしすぎる。もう、無理。もう限界!!!
早く、この状況を終わらせたい。
「もういいだろ!」
「まだ全身舐め終わってません!」
だから真顔でなに言ってんだよ!!
恥ずかしいが、仕方ない。
桐生の背をぎゅっと抱きしめて耳元で囁いた。
「……我慢出来ない。いますぐお前が欲しい……」
「もーーしかたないですねーー」
蕩けそうに嬉しそうな顔をした桐生がゆっくりと体重をかけて入ってくる。
入れられるのは凄く好きだ。お前が俺で欲情してるのが嬉しい……男の体は正直だ。やりたくなきゃ勃つわけがない。入ってくる時の体温と圧迫感が堪らない……気持ちいい……これだけでもう一回出そう……。
リズムをつけて小刻みにいいところばかり突いてくる。気持ちいい。
「ココがいちばん気持ちいいんだよね?ここを攻めながら、ペニスの1番先を親指で上下に押すと、深森さん、すっごくヤラシイ顔見せてくれる……今すぐ出させてあげたいけど、もったいないからゆっくりね。もっともっと俺が欲しいって顔見せて欲しい……」
こいつまだ喋り続けてる!
まるでやっている最中の桐生の頭の中を覗いているみたいだ。いつもこんなこと考えながら俺のこと抱いてるんだ。
「乳首も弱いよね。ココを捏ねたり、押しながら入れると俺のことぎゅって締め付けてくれる。すっごく気持ちいいけど、あなたをもっと味わいたいからなるべく気をそらしてゆっくり、ゆっくり動くようにしてるんだーーできれば深森さんの理性がぶっ飛んで、甘ったるい声で俺が欲しいって呼んでもらってからイきたい」
くそーーだから恥ずかしいわ! 好き勝手言いやがって!
「深森さん、なかなか理性飛ばしてくれないんだよね。でも最近覚えたんだーー」
言うとペニスを上下に激しく擦られた。
「……ああぁ!!」
堪らず桐生の手のひらに思いっきり出してしまった。
余韻に息を深く吸っていると、桐生の物で強く突き上げられた。
「イった直後にココを突くと理性飛んじゃうんだよね……」
「……やめ……まだ、まだイッってるから……」
まだ前の快楽が収まってもいないのに強く揺さぶられる。
いい……気持ちよくておかしくなりそう……。
「ダメ……そこ。ダメだ……」
ダメだ、飛びそう。
「ダメじゃないでしょ?最高に気持ちイイ!でしょ?」
あーーもう無理。気持ち良すぎる……。
「すごいやらしくて、イイ顔。たまんない」
「……あ、あぁ……いい。尚。気持ちいい。おかしくなる」
「ココ?」
必死に頭を振ってうなづく。
「……いく。尚来てくれ」
もう、早く早く解放してくれ……。
「出して……一緒がいい」
「あーー可愛い! あーーー堪んない! 気持ちいい! 俺の! 俺のだからね!」
抉るように深く突かれて体の中に生暖かい感触がした。ほぼ同時に俺も桐生の下腹にぶちまける。なのにまだ桐生は俺のことを貪るみたいに動きを止めなかった。もう意識が無くなりそう.気持ちいい。堪らない。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
あーーもう!
懲らしめるつもりが、なんで俺の方がダメージ喰らってんだ……。
そうだった。こいつ口から生まれたみたいな男なんだった。
やっと終わっても桐生はぎゅうぎゅう俺を抱きしめながら、ずっと「好き好き」言い続けてるし……。
「俺以上にあなたのこと気持ちよくする男はいないんですからねー絶対に捨てないで下さいよーー!!!」
この状況で嘘つけるはずもないから多分これが本音なんだろうけど……桐生の頭の中って想像を遥かに超えて恥ずかしい……。
可愛いから仕方ないと思ってる俺も大概だけどな……。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
ごめんね。また嘘ついちゃった……。
実は、深森さんが食事を持ってきてくれる間に飲み込まなかった薬を吐いて捨てた。飲んでも良かったんだけど、理性ぶっ飛んであなたのこと傷つけちゃうの怖かったしなーー。
でも、薬のせいにして、いっぱい甘えられてサイコーだったな。今まで、ドン引きされると思ってやれなかったこといっぱいできたし。
どーしよ。忘れたふりしといたほうがいいのかな? 最初からお酒弱いキャラにしとけば良かったなーーそしたらいつでも自然に甘えられたのに……あ、嘘つかないって決めたのにまたつい色々考えてしまう。だって深森さんて、結局俺のこと全部許してくれるんだよねーー。
あーーもう大好きすぎる。
俺を呼ぶ、やらしい顔もっともっと見たい! また何かいい方法。考えよーー。
まだぐったりと眠る深森さんの顔中にキスをする。
ごめんね! 傷つける嘘は絶対つかないからね。
fin.
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