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【730days番外編】由子さん ※R18
待ち合わせのホテルのロビーで深森さんのお母さん、由子 さんが俺に気づいて手を振ってくれた。秋田であったときにラインIDを交換していて、今度観劇のために東京に来ると教えてもらったので、お食事しませんかと誘った。
ちょっと緊張する……。
この機会に深森さんとのことを彼女にちゃんと言おうと決めていた。
「ほんとにデートね! こんな素敵なホテルのディナーに誘ってくれるなんて嬉しいわ」
今日は晴れていて良かった。
レストランのパノラマの窓からは東京の夜景が綺麗に見えた。
「しかもデート相手も最高だし!」
嬉しそうにはしゃいでる姿が可愛い。深森さんに似て色白だし笑った表情もそっくりだ。
「由子さんにお話ししておきたいことがあるんです。聞いてもらえますか?」
「あら。何かしら?」
「せっかく旅を楽しんでいる最中に、気分を悪くさせたら本当にすみません。でもちゃんとお話ししたいとずっと思っていました」
深森さんから言う前に俺から彼女に話しておこうと決めていた。やっぱり言いにくいだろうし、罵倒するなら俺だけにして欲しい。
「俺、息子さんと付き合わせていただいています」
由子さんの動きが止まる。怒鳴られるかな? 手に持っているシャンパンをかけられるかも……そのくらいのことは覚悟しているけど、もしかしたら泣かせてしまうかも知れない。彼女を悲しませてしまうのは辛いな……。
「深森さんのことは、どうか責めないでください。俺が強引に付き合ってほしいと頼みこんだんです。深森さんは優しいから応えてくれただけで……」
覚悟を決めて待っていても、予想していたことはどれも起こらなかった。
「……桐生くん。話してくれてありがとう。あの子は私の息子ではあるけれど、私のものではないわ。だから私の許可なんかいらないのよ」
「由子さん」
「実は、何となくは気づいてたの。あなたのことを話すとき、あの子すっごく優しい顔をしていたから。さすがにほんとにそうだと聞くと、びっくりしちゃったけどね」
「すみません」
「謝ることなんかないわよ。私が望む事はあの子が幸せでいることだけ。あとね。あの子は意外と頑固なのよ。だから言い寄られたからって好きでもない人と一緒にいるわけなんかないわ。まして同性のあなたを選んだなんてよっぽどあなたのことが好きなのね」
すごい優しい。怒るどころか、俺のことまで気遣ってくれている。
「あとこれは個人的興味で聞きたいんだけど……あなたはお婿さんなの? お嫁さんなの?」
深森さんそっくりの表情でいたずらっぽく聞いてくる。
「えーーっと……聞いたらちょっとショック受けちゃうかも……」
「あーーお婿さんなんだ。やっぱりねーーあの子ボーッとしてるしねーー」
由子さんはシャンパンをあけながら、コロコロと笑った。
「すみません」
「だから謝ることないわよ。朱 とのかけに負けちゃったわ。あと、もう一本飲んでもいい?」
「もちろんです」
さすが深森さんのお母さんだ。懐が深いし、酒も強い。
由子さんは俺のことを一言も責めず、楽しそうに食事とお酒を口にしてくれる。
楽しいな。こんな楽しい女性とのデートは初めてだ。
「私も、ちょっとだけ昔話をさせてもらってもいいかしら……」
頷くと、由子さんは高揚した頬で、まるで少女のような表情をして話しだした。
「あの子の父親は私が勤めていた緩和ケア病棟で知り合った患者さんだったの。もうステージ4の膵臓ガンでね。余命一年だと診断されていた。でも好きになっちゃったのよね〜〜家族にも友達にも、みんなに大反対されたけど『うるさーーい!』って押し切って結婚しちゃったの。それから5年も生きてくれて、私に理と朱を残してくれた。あの時の決断を少しも後悔してないし今でも誇りに思ってる」
そんな大事なお子さんなのに……。
「だからあなたたちも周りのことなんか考えなくても良いのよ。2人が幸せでいてくれればそれでいいの。私はこんな綺麗な息子ができて、すごく嬉しいわ」
由子さんはそう言って俺を抱きしめてくれた。
すごい。ほんと惚れそう。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
「えらい上機嫌だな」
「すっごい美女とデートして来たんで」
言うと、深森さんが怪訝な顔をして俺を見た。
「……お前、それ真面目に言ってんのか?」
まずい。深森さんの顔が曇ってる。
「すみません! 変な言い方して、相手、由子さんです!」
「は? なんで母さんと会ってんだよ?」
「秋田行った時に、ラインID交換してて、東京に観劇に来るって連絡もらったんで、食事に誘いました」
「なんで俺抜きなんだよ!」
「ごめんなさい。話したいことがあったので」
「怒ってないよ。びっくりしただけだ」
深森さんは、ちょっと拗ねたように横を向いた。
「深森さんもお母さんに会いたかったですよね」
「そんなことは別にいいよ。それよりなんの話したんだよ?」
「え、俺のことお婿さんにしてくれるって言ってくれました」
「は? お前俺たちのこと、言ったのか?」
「すみません! どうしても俺から先に謝っておきたくて……」
勝手なことしちゃって、深森さん怒るかな……。
「……どうせ、いずれ言うつもりだったからいいけど……大丈夫だったか? 母さん腰抜かしてただろ?」
「深森さん、女性はすごいですよ。俺なんか、まだまだだな〜〜って心から思いました」
深森さんは不思議そうな顔してるけど、ショック受けるかもだから詳細は言わない方がいいかな? 妹さんにもバレてたみたいだし……女性の勘って恐ろしいな。
「あーーでもほんといいお母さん。俺のお母さんでもあるってことでいいんですよね? 親孝行しなきゃーー!!」
深森さんをぎゅう……っと抱きしめる。
「なんだよ。急に!」
「お母さん、深森さんが幸せなのが一番嬉しいんですってーーだから俺めいいっぱい幸せにしますからね!」
「母さん、そんなこと言ってたのか……」
深森さんもお母さんのこと傷つけるかもって心配してたのかも。やっぱり勝手なことして悪かったな。
「お父さんのことも話してくれました」
「そんな話もしたのか。よっぽどお前のこと気に入ったんだな」
さっきの嫉妬だよね。もう深森さんの気持ちを試したりしないって決めてるけど.すげー嬉しい。あーーしたいなー。今日平日だけど、お願いしちゃおうかな。
「抱いてもいいですか?」
抱きしめて耳元で囁く。
「……いやだなんて言ったことねーだろ。いちいち聞くなよ」
「すみません。でもあなたに許して欲しいんです」
恥ずかしいから言いたくないのはわかってるんだけど、聞きたいんです。俺の全てをあなたに許して欲しい。あなたに許される度に俺は存在していいんだって安心できる。
「しよう。俺もしたい」
深森さんは、わかってて甘やかしてくれる。賢くて優しい俺の恋人。大好き。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
ゆっくりと体重をかけて入ると深森さんは息を吐いて協力してくれる。なるべく力を抜いて俺を受け入れてくれる。抱いているのに抱かれてるっていつも感じる。俺の全てはあなたに許されてる。
「手……」
深森さんが促すように指を絡めてきた。俺もあなたの手を握りながらするのが好き。ぎゅ…って握る強さで深森さんがどこが気持ちいいか教えてくれる。
「ここ?」
いいところにあたるように突く。最初はゆっくり。
「……いい。そこ……もっとゆっくり……」
シャラシャラとお互いの手首でブレスレットが揺れる音が心地いい。
深森さんが俺の物だって証。そして俺の全てがあなたの物だって証だ。
「こう?」
「は……あ、そう。気持ちい……」
可愛い……すごい素直。もっともっと気持ちよくなって欲しい。腰を動かしながら、ペニス先の筋を優しくなぞるとビクビクと体が跳ねた。少し出てきた精液を潤滑油にして強く弱く全体を撫でる。
「……いい。尚……いきそう……」
俺を見る蕩けた表情がたまらない。
「強くしていい?」
「いい……強くして……もっと、早くついてくれ」
ああ、もう無理。深森さんの足を広げて強く早く打ち込む。気持ちいい! たまらない!
「は……あ、ああ!」
繋いだ手の強さが教えてくれる、深森さんの気持ちいいところを狙って強く打ち付ける。
「……いく……もう!」
高揚したやらしい顔。俺だけが見れるあなたの痴態。
「尚、好き……すきだ」
言いながら足で俺の腰を引き寄せて懸命に好きだって伝えてくれる。お互いの体の隙間が少しでも無くなるように密着したい。このまま溶けちゃいたい。
「俺も、俺も大好き……幸せで嬉しくてどうにかなりそう」
由子さん。理さんを産んでくれてありがとう。
絶対絶対。幸せにしますからね。
・・・・*・・・・*・・・・*・・・・
「お母さん面白いですよね。まさかお婿さんかお嫁さんかって聞かれるとは思いませんでした」
「お前そんなことも言ったのか!」
「いえ、言ってないですよ! ただ見透かされちゃっただけで……」
深森さんが枕に撃沈してる。やっぱ男のプライドとしてバレたくなかったかな?
「すみません……俺、お嫁さんでもいいですよ」
「は?」
「深森さんがそっちの方がいいなら……」
「いや、いいよ。そういう問題でもないし……」
そうだよなーーちょっと想像つかないし。
「いや、やるか!」
……え?
まさかの声がして手を引かれると、あっという間に体勢が逆転して、男前な深森さんが上から俺を覗いている。
……かっこいい。
「新しい世界が開けるかもしれないぞ」
俺、襲われちゃうんだろうか……イヤ、別にイヤじゃないけど、イヤじゃないけど! 心の準備っていうか体の準備っていうか、覚悟が!
「冗談だよ」
深森さんは笑って抱きしめてくれた。
びっくりした! びっくりした! びっくりした!
すげーー緊張した。嫌じゃないけど、嫌じゃないけど!! やっぱ覚悟いるなーー。
深森さんはこんなこと、いつも許してくれてんだよなーー。
「そのうちな」
悪戯っぽく笑うと、深森さんは寝てしまった。
やっぱ親子でそっくりだな。
……本気かな?
俺は、あなたが側にいてくれれば何でもいいんだけど。
ちょっとだけ覚悟しとこう……。
fin.
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