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第102話「何度目かの愛の告白」
それから2人で背中を向け合って眠ってしまい、起きると14時ではなく16時を回っていた。
限りある休みなのに!と飛び起きた2人は、照れ合いながらも約束通り海辺を歩く事にした。
「潮の匂い久々」
住宅街を抜けてひたすら坂になっている道を下っていくと、海が見えた。
「芸能人ならしょっちゅう南の島とか行ってそうなのに」
「うーん、スキャンダル起こしてから本当に出掛けてなかったからね〜」
「ああ。なるほど」
もう日が落ちて来ている。
海は穏やかな波を海岸に寄せては引いて行き、2人は堤防の天端の上に登って座り、ボーッと海面を見つめていた。
目の前にはテトラポットが延々と並んでいる。
芽依は湿気を多く孕んだ風を正面から受けると、フ、と目を閉じてまたゆっくりと開いた。
「鷹夜くん」
「んー?」
辺りには人がおらず、ここに来るまでは鷹夜の実家から徒歩で5、6分だった。
潮風の匂いは鷹夜も久々で、隣に座って空を見ている芽依の声に呑気そうに返事を返した。
夕方と言えど生暖かい夏の海辺の風は心地良く、兄妹3人でこの辺でよく遊んだ事を思い出す。
「好きだよ」
「っ、なに、急に」
「んー、、ちゅー、したなあと思って」
「あーー、、うん、したね」
愛情深い男なのだろうと思った。
一途にさえなってくれれば、きっとどこまでも鷹夜だけを愛し続けてくれる。
愛情たっぷりのキスをされた後だと、それは尚更に説得感が増していた。
声のした方を向くと、だんだんと傾く日差しに照らされた整った顔がこちらを向いていた。
「、、俺がさ、」
「うん」
「せめて女の子だったらなあって思ったんだ」
鷹夜は芽依と付き合うに踏み出さない理由をポツポツと話し始めた。
「芽依くんがそんなこと関係ないって言ってくれるのは知ってんだけど、でも、俺で良いのかって思うんだよ。女の子じゃなくていいの?三十路のおっさんだよ?5つも歳上だよ?って」
「関係ないよ、そう言うの」
やはり、芽依は鷹夜の言葉を優しく否定してくれる。
「でもさ、いざ付き合って、年月が経って、結局別れますってなったとき、君はまだ若いかもしれないしその見た目や性格だからすぐに次ができるかもしれない。でも俺は?」
「、、、」
「保身も考えて答えが出せないんだ、今」
告白する側だった芽依の不安と、された側の鷹夜の不安。
それぞれが、不確定な未来や、同性と付き合うと言う未知の経験への恐怖が少なからずある。
鷹夜はずっと真剣に、芽依の告白にきちんと答えようとしていたし、その事についてずっと考えていた。
「、、なのに、キスできちゃったよ」
弱ったな、と言う表情をして彼はまた海を見つめた。
「え」
「できそうになかったから拒否してたのに、誘ったの俺だし、できちゃったし、はあ」
「ええっ、ため息つかんでよ。俺嬉しかったのに」
「だからあ、」
鷹夜はまた盛大にため息をついた。
「キスできちゃったし、かなり良かったし、俺も嬉しいって思ってるから、今、困ってんでしょ」
呆れた、と言う視線がこちらを向いて、芽依はドキッと胸が鳴った。
「う、嬉しかった、の、、?」
「そーだよ、悪いか」
そうなると、もはや後の問題は鷹夜の考え方次第だ。
「悪くないです。と言うか、めっちゃ嬉しい」
芽依はまた顔を真っ赤にしている。
俯いて、唇を変な形に動かしたりとモジモジしてから鷹夜に手を伸ばして、コンクリートについている彼の手に触れた。
「?」
「付き合って」
「、、、」
ゴオ、と風が吹く。
芽依の真剣な顔は絵に描いたように美しく、整っていて格好良い。
「、、いーやーだー」
「ッんでだよッ!!この雰囲気はOKだったじゃん絶対!!行けると思ったのに!!」
鷹夜がジトっとした目を彼に向けて断りを入れると、芽依は思い切りコンクリートに拳を打ち付けた。
痛そうだ。
「あははは、ごめんごめん」
「なーんーでー!!こんなイケメンが必死になってずっと口説いてんのに、、!」
「おっさん的には、だから、だよ。超絶イケメンの芽依くんと付き合って、君の人生むちゃくちゃにするのも申し訳ないだろ。色々考えたいの」
堤防の上にうずくまった芽依の頭をワシャワシャと撫でて、鷹夜は「ハッハッハッ」と笑ってやった。
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