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第120話「熱を帯びる」
ピンポーン
「っ!」
恋人ルールその1。
送り迎えはできるだけ控える。
あまりにも芽依が鷹夜を車に乗せる回数が多いと、流石に付き合っているのでは?何か良からぬ関係なのでは?と雑誌の記者やら追っかけとかストーカーとかしてしまうファンやらに疑われそうだと感じた鷹夜が提案したルールで、車を持っている芽依が自分を迎えに来たり送ったりしようとするのを食い止める為に設けた。
もともと電車通勤を8年、その前も大学で電車通学、高校も電車通学をしていた彼は電車と言うものに慣れていて、三半規管の弱さですぐ酔う車と違い断然健康のまま長距離移動ができるので助かっている乗り物でもあるので、これからは芽依の家までこれで通うと決めたのだ。
彼が鷹夜の家に来る場合は彼なりのやり方で良いと言ってあるが、鷹夜から行く場合は鷹夜流にする、と言う事だ。
ガチャッ
「鷹夜くんッ!!」
「おう」
合鍵を持っているくせに、部屋の前でチャイムを鳴らした鷹夜は嬉しそうにドアを開けた芽依を見て少し照れたような反応を返した。
久しぶりに訪れた部屋は変わっている部分はなく、お互いにやっと重なった休みを今日はゆっくり過ごそうとしている。
鷹夜は今日、明日が休みで、芽依は先程まで仕事があった。
今日と言っても鷹夜が芽依の家に来たのは午後17時過ぎで、芽依の仕事と自分の睡眠時間を考え、2人でこの時間から会おうと話し合った結果だ。
「い、1ヶ月ぶりの鷹夜くんっ!」
「ちょ、靴脱いでるから」
会った瞬間からベタベタと身体にまとわりついて来る芽依が嬉しくも恥ずかしく、どこか素っ気ない態度を取りながらリビングに上がる。
途中にあるキッチンに、昼間に少し高級なものを揃えているスーパーで買ってきた惣菜やおつまみ、酒の入った紙袋を置き、とりあえずリビングのソファに座った。
「はあ〜、電車混んでた」
「だから迎えに行くって言ったのに」
「いや、疲れたけど今日土曜日で人多かったからだし、うちからここまで30分だよ?歩き入れて40分。いちいち迎えに来なくていいよ。ルール忘れた?」
「わーすーれーてーなーいーよー。何でそう甘えてくれないかなあ〜〜色気がない」
「なくていい」
会って数分でブスっと頬を膨らませ、むくれ始める芽依。
会っている時間を少しでも増やしたいのだろうが、決めたルールはルールだ。
「、、ありがとう。遅くなってごめん」
少しイラつきながら隣に座った芽依に、鷹夜はふっと表情を緩めて話し掛ける。
手を伸ばし、いつものようにサラサラな髪に触れると、一瞬「解せぬ」と言う顔をした彼はすぐに緩みそうになる口元をぐにぐにと歪めて鷹夜の方を向いた。
「っ、、すぐそうやって俺のこと甘やかす!!」
「うん。好きだし、可愛いから」
「っぬぅうう!!馬鹿!!好き!!」
「おー、よしよしよし」
完全に懐柔している。
芽依は嬉しそうに鷹夜に抱きつき、肩に顔を埋めて久々に会えた恋人の匂いを吸いまくった。
芽依は鷹夜に自分の事を「スパダリ」「ハイスペック」と思って欲しくて日々努力してはいるのだが、未だにこの鷹夜の底知れぬ「大人」の振る舞いに勝てた試しがない。
情けない程に尻尾をブンブンと勢いよく振る大型犬としか、鷹夜に認識されていなかった。
(芽依、可愛いなあ)
「鷹夜くん俺寂しくてね!!我慢できなかったから鷹夜くんがこないだうちに来たときに着てたTシャツとかめっちゃ嗅いじゃった!」
「1ヶ月以上前のだろ!?それは洗え!!汚ねえ!!」
「鷹夜くんが着たものが汚れてるわけないだろ!!」
「現実を見ろ!!」
それだけ聞くと鷹夜は芽依を自分から引き剥がし、急いで寝室に駆け込む。
ベッドの上に丁寧に畳んで置かれている見覚えと着た覚えのあるTシャツを見つけると掴み上げ、急いで洗濯機の元へ走った。
「やめてー!!鷹夜ジュニアー!!」
そしてそれを「鷹夜Jr.」と呼んで毎晩嗅ぎ、一緒に寝ていたせいで愛着が湧いてしまっていた芽依は、捨てる訳でもないのに洗われたくなくて鷹夜の後を追った。
「芽依」
「、、、」
「芽依、っん、、あのさあ、」
「ん、なに?」
「その、、やめない?」
はあ、と熱い吐息を吐き出して、鷹夜は自分の脚の間にある芽依の顔を見下ろした。
「やめない」
「っ、、」
ニコ、と笑った芽依と対照的に、鷹夜は困惑して眉間に皺を寄せた。
ひと通り最近あった事を話し合い、笑って、腹も膨れるくらい買ってきた惣菜類を食べて酒を飲んだ。
今日はお互いにあまり酔っぱらったと思わない程度で終わらせ、つけていたテレビで始まった旅番組を見ていたところだった。
旅番組、から連想して先月の鷹夜の実家への旅行の話しになり、その結果、今、こうなっている。
「んっ、、くすぐったいんだってばあ」
「ゾワゾワしない?」
「ゾワゾワ、、も、する」
鷹夜がソファに座り、脚を開いたその間に芽依がいる。
床に座り、ズボンを脱ぎ捨てた鷹夜の太ももを執拗に舐め回しているのだ。
それも、触れるか触れないかと言う加減のせいで、ゾワゾワと肌が粟立つようにしている。
「鷹夜くん、勃起したね」
「見んな、恥ずかしいんだから」
「見ちゃうよ。彼氏のちんこだもん」
目の前でパンツを押し上げて勃ち上がっている雄々しいものを眺め、芽依はニヤニヤと笑む。
彼の頭上からその姿を見つめる鷹夜は恥ずかしさと興奮で顔を赤くして「はあ」と呆れたように息をついた。
「鷹夜くん」
「ん、なに」
熱っぽい視線がこちらを見上げてきた。
「今日は鷹夜くんのちんこしゃぶるからね。あとお尻の穴も舐める。乳首も触る」
「分かった分かった分かった」
「ちゃんと聞いてよ。ちゃんと頭に入れて」
スリ、と足の付け根を撫でられ、思わず鷹夜の身体が跳ねる。
芽依が言った台詞を刻むように頭の中で繰り返すと、段々と身体が熱くなるのを感じた。
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