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【第2部 ローブと剣】第8話
体を繋げるとはたがいを所有することだ。人間の体でいちばん脆い場所をさらけだし、からめあい、傷つけあう寸前まで接近して、快感をさがす。相手を捕らえ、なかに侵入し、楔をうがつことで、自分もまた捕らえられる。
クレーレはアーベルを押さえつけたまま、服を剥ぎ、首筋を噛む。肩甲骨の下から胸へと唇をずらしながら所有のあとをきざむ。体中にしるしをつけてしまいたいと思う。アーベルの声が低いうめきに変わり、痛みも圧迫も超えて感じているのがわかる。その素直な反応に暗い怒りが急速に消えると、ただ愛しさだけが勝った。
足を絡ませて動きを封じたまま、左右の胸の突起を交互に舌でころがして丹念に愛撫する。アーベルは脛を押さえられてもがきながらも、腰を揺らし、敷布をぎゅっと握りしめて快楽の行き場をさがしている。その下衣を一気にはぎとると、クレーレはすでに立ち上がっている屹立を口にふくんだ。
「…っあ…ああっ」
アーベルは胸をそらせて鋭く声をあげた。彼の中心から滴り落ちるしずくを舐め、もっと奥まで咥えこむ。竿を唇で上下にしごいて吸い上げると、アーベルの指がクレーレの髪をまさぐった。もっと奥へ、もっと強くと無意識に催促するのに、浅い刺激と強い刺激を交互にあたえて焦らし、いったん唇を離すと、自分の下衣も脱ぎすて、はりつめた屹立同士を正面から擦りあわせる。
「クレーレ……あ……そこ……ああっ」
衝撃でアーベルはたちまち達して、白いしずくをとばした。
体をまるめるようにして荒い息を吐く彼をクレーレは抱き寄せ、後ろの穴に指をのばした。打ち身の跡に塗った透明な軟膏を狭い入り口に塗りこめる。ゆっくりと熱い内壁をかきまわすようにしてほぐしていく。二本、三本と増えた指が快楽の中心をさがしあてると、抱えた腰がとびあがるように揺れた。
ほとんど苦痛であるかのように眉をひそめるアーベルの、さらけ出される表情が愛しくて、思わずクレーレは笑みをもらす。
「笑う……なよ――っあ、ああ……頼む――」
喘ぎをもらしながら、アーベルはついに懇願して涙をこぼす。その目尻を舐め、太ももを持ちあげると、クレーレはゆっくり屹立を埋めこむ。
アーベルの中に入ると、いつも信じられないくらい、熱い内部が締めつけてくるのに息をのむ。無防備に自分を受け入れ、ぎっちりと満たしながら、奥へ奥へと誘われるようだ。敏感な場所を擦りあげ内側をかきまわすとアーベルは悲鳴のような嬌声をもらし、クレーレのリズムにあわせて腰を振る。一度達したのに濡れそぼった屹立がせつなげに揺れ、強く突き上げるとまた吐精した。
クレーレはいったん彼から出てうつぶせで膝をつかせ、今度は後ろから侵入する。
「あああああっ」
高い声があがり、激しく収縮する内部にそれまで保っていた余裕が消えた。そのまま襲いかかるように激しく腰を打ちつけ、泣きながら懇願するアーベルを抱き、高くのぼりつめていく。
明け方も近いころ、はじめて足を踏み入れた回路魔術師の宿舎は質素でそっけなかった。早く帰れとくりかえすアーベルに耳を貸さず、クレーレは彼の腰を支えるようにして教えられた部屋へ連れ帰る。
「行けよ、馬鹿」
寝台に腰を下ろし、アーベルは何が恥ずかしいのか、顔を赤くしてうつむいていた。クレーレはそっと手をとり、甲に口づける。
「俺はけっしてあきらめない」
そうささやいて、部屋を出た。
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