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【第2部 ローブと剣】第14話

   * 「回路魔術と我々はそんな関係にあった」とレムニスケート当主はいう。 「だがおまえのいうことのほうが今では理がある。レムニスケートも、師団も、そして騎士団も、状況にあわせて変わる必要があるのは自明だ。エミネイターに情報を渡すのは許可しよう」 「はい」 「――それから例の魔術師についてだが……」  クレーレはかすかに緊張し背筋をのばす。父は表情を変えなかった。 「彼とおまえの関係についてはアルティン殿下に釘を刺された。殿下はおまえが誰を選ぼうと次のレムニスケートを買うそうだ。そこまで殿下に評価されているなら、私からいうことは何もない。だがひとつ、確認しておきたい」 「――なんでしょう」 「おまえが義務に反しないなら、私もおまえが誰を選んでも干渉はしない。だが将来、もしも血を分けた子供が欲しくなったらどうする気だ?」  クレーレは唾をのみこんだ。喉がごくりと鳴る。 「レムニスケートは血統で続いている家ではないと、父上こそよく知っているはずです。私たちは実力主義だ。必要なら養子をとればいい」 「だが考えが変わらないとはいいきれないだろう。いずれ後悔するかもしれんぞ」  反射的にクレーレは宣言した。 「私は自分を信じています」  もしも自分がアーベルの信を得られなくても、自分が自分であることを否定はできない。自分の選ぶことは信じていられるし、後悔することもない。    *  クレーレは指を抜いて潤滑油を自分の屹立に垂らす。まだ荒い息をついているアーベルの足をもちあげ、ゆっくり侵入する。中は十分にほぐされて、根元までクレーレを熱く受け入れた。アーベルは目を閉じたままほとんど声にならない声をもらしている。  集中した表情がクレーレを内側から揺さぶり、思わず「きれいだ……」とつぶやいていた。 「……馬鹿、何をいってる…」 「アーベル――愛している」  そのまま唇をふさぎ、舌でねぶりながら腰を動かす。奥の敏感な場所を擦るたびにアーベルの体がふるえ、クレーレの背中に爪がたてられる。  腰を抱きかかえて激しく攻める。一度抜いて姿勢をかえ、後ろからのしかかりまた挿入すると、アーベルは高い声をあげて再び達した。だが内側は脈打ちながらクレーレを誘いこんでいる。  去り際に当主はクレーレへ書庫の鍵を渡した。 「エミネイターの欲しいものはここだ。おまえが直接渡すようにしなさい。管理は怠らないように。この鍵は審判部の兄も持っている」  そこでみつけたのだ。  書類に埋もれるようにして保管されていた小さな絵姿だった。手のひらほどの大きさで、額装され、何の記念として描かれたのかもわからない。  ナッシュ。裏側に回路魔術の祖の名前が刻まれている。たしかにその顔に見覚えがあった。四代離れているとは思えないくらいよく似ていた。 「アーベル」  あの額装の男は、いま自分の下にいる生きた体とはまったく別物だ。それなのに彼と自分の先祖がつながりがあることに、理由もわからず心が乱された。  もっと穏やかに愛したくても、引きこまれる強い衝動をとめることができない。アーベルが絶え絶えにあえぐ中、クレーレは強く腰を打ちつけ、射精の強い快感に身をゆだねる。

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