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火曜日 その1
「お〜い!レオ君〜!レオ君ってば!」
大学の中庭で昼寝をしているレオの前に、先輩のあさみさんが立っていた。
「ちょっとどうしたの?死んでるのかと思った。
もう夕方だよ」
「え?マジっすか?」
「昼の講義始まる前に、
レオ君を教室から見かけてて、
で、今ここを通ったら、まだ寝てるじゃん?
死んでるのかと思ったよ。
三時間くらい経ってない?
何かあったの?元気ないし、
ぼーっとしちゃって」
「いや、特にってわけじゃないんですけど、
久しぶりの友達にあってから、
ちょっと頭に引っ掛かってる事があって」
「なになに?ゴシップ?なら、聞くよ〜!」
「ゴシップじゃないですよ!
何かモヤモヤするっていうか・・・」
「何それ?よくわかんない。
レオ君でも悩むことあるんだね〜」
「え?それどういう意味ですか?」
「いやいや、何かレオ君って爽やか君だからさ〜。
女の子いっぱいいるみたいだし?
悩みありませ〜んって感じだからさ〜」
「何すかそれ。
俺にだって悩みの一つや二つくらいありますよ!」
「じゃあ、何で悩んでんの?女がらみ?」
「いや〜、女絡みじゃないですよ。
俺そもそも今、彼女いないっすよ」
「え?そうなの?
この前までリエちゃんと
付き合ってたんじゃないの?」
「あ〜振られました。
ってそんな事じゃないんですよ。
気になってるの」
「え?彼女にふられた事以外の悩み?」
「何かわかんないんすよね〜。
何かこうモヤモヤするっていうか・・・」
「彼女に振られた事より大きな悩みって何よ。
聞いてるこっちもわかんないわ」
「そうっすよね〜」
「ま、悩めよ青春!って感じ?
まあいいんじゃない?
そのうち何にモヤモヤしてんのか
判るんじゃないの?」
「そんなもんすかね?」
「ま、何か話したくなったら聞くよ〜。
ゴシップネタなら尚更。
レオ君かわいい後輩だし」
「はあ・・・」
「もう、しけた顔してないで、
そろそろ帰ったら?バイトないの?」
「バイト・・・あ!親父のスタジオに
届けもんあるんだった!」
「でしょ?三時間も寝てる場合じゃないじゃない!
シャキッとして!」
「はい。
あさみさん、何かわかんないけど、
とりあえずありがとうございます」
「はいよ〜。頑張れよ〜後輩!」
レオは家に向かって歩き出した。道中あさみ先輩に言われたことを反芻してた。そういえば、彼女のリエに振られた。三日前のことだ。正直三日前に振られたばかりだったから、一昨日、シノブに電話したのだった。でもリエに振られたことは、今話題に出てくるまで気にもならなかった。一年近く付き合っていた彼女だったのに。このモヤモヤの原因がわからないまま、家に置いてある父親のギターを持って、スタジオへ向かった。
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