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金曜日の深夜を超えて

シノブは心臓が飛び出るくらいドキドキしている。 どうしよう・・・どうしよう・・・。僕、こんなにドキドキしたことない・・・。レオ君、助けて。 そう思ったら、いても立ってもいられなくなった。自室に戻るとレオに電話をしていた。呼び出し音が鳴る。なかなか出ない。もう一度、かけ直す。5回目の呼び出し音でレオが出た。 「もしもし?シノブ?どうした?」 「レオ君?どうしよ。僕。僕・・・・」 それ以上言葉が出ない。 「え?シノブ?どうしたの?具合でも悪い??」 「ううん」 一言だけ言って言葉が途切れた。 レオの後ろで、人の声がする。 ”レオ〜、次の曲お前コーラス入れろ〜” シノブはハッとした。 「レオ君、ごめん。なんでもない。ちょっと動揺してて。でもレオ君の声聞いたら落ち着いた」 「え??シノブ大丈夫なのか?俺、今、親父のスタジオに来てて、今から歌のコーラス入れる手伝いなんだけど、遅くてもよかったら、帰りにお前の家に寄ろうか?」 「ううん。大丈夫。コーラス録り、頑張って。日曜また連絡するから」 「わかった。ほんとに大丈夫なんだな?何かあったら、電話は出れないけど、ライン入れろよ」 「うん。わかった。ありがとう」 そう言って電話を切った。 シノブは、少し落ち着いた。まさか芳樹さんにキスマークを付けられるなんて思ってもいなかった。そしてなんでこんなにドキドキしているのか。僕って変なの?考えれば考えるほど分からなくなっていってた。 お風呂に入る。 脱衣所で服を脱いで、鏡に自分の体を写してみた。 シノブの体は、色が白く華奢だ。 二十一歳の男の体にしては、筋肉もあまりなく手足が長い。 さっきの芳樹の体とはまるで違う。 あんなに筋肉は付いていないし、体毛もほとんどない。 自分の首筋を見る 右の首筋に、その印は赤く残っている。 それを見て、シノブはまた恥ずかしくなった。 湯船に浸かる。 「僕どうしちゃったんだろ」 ぽつりとつぶやいた。 土曜日の早朝5時。 シノブの部屋のインターホンが鳴った。 シノブは眠い目を擦り、インターホンに出る。 「シノブ。俺、レオだけど」 レオだった。慌ててオートロックを解錠する。 パジャマの上からカーディガンを羽織って、 玄関の前でレオが上がってくるのを待つ。 「シノブ、大丈夫か?」 そう言いながら、レオは玄関を開けて待っているシノブの元へ心配そうな顔をして来た。 「うん。ごめんね。昨日あんな電話しちゃったから・・・」 「それはいいんだよ。気にしなくて。何かあった?」 そう言いながらレオはシノブを抱きしめた。シノブは崩れ落ちそうになる。 「おいおい。大丈夫かよ。ほら、立って」 「うん。なんかレオ君の顔見たら安心しちゃった」 「何があったんだ?」 「・・・・・・うまく言えない」 そう聞きながら、レオはシノブをソファーに座らせた。シノブはまだふわふわしているみたいで、隣に座ったレオの膝に頭を乗せてきた。 「シノブまだ眠いよな。ごめんな。こんな朝早くに」 「ううん。来てくれて嬉しい。まさか、ほんとに寄ってくれるって思ってなかったから」 「そんなの、シノブに何かあったら、俺、心配でたまらないし」 「へへ。ありがとう。そんなレオ君、昔から変わらないね」 「お、おう・・・」 レオは持ってきた飲み物を飲んだ。そして、そっとシノブの髪を触る。シノブは目を瞑っているが起きている。 「レオ君、くすぐったい」 「ごめんごめん」 そう言いながらレオは、髪の毛から耳へ、そして頬へと手を動かした。 「レオ君の手冷たくて気持ちいい」 そうシノブがつぶやいた。 レオはドキッとした。もう少し触りたいと思っている自分を自覚した。 「お、俺の手気持ちいい?」 「うん。気持ちいいよ。そのまま触って」 レオのドキドキは止まらない。そして、気がつけばレオは自分の下半身の中心が熱くなっている事に気がついた。 ヤバイ・・・。 そう思った時シノブが寝返りをうった。シノブの右の首筋が露わになる。 ”えっ!?” シノブの右の首筋に赤いアザのようなものがある。アザの割には小さい。虫刺されの割には大きい・・・ ”はっ!!!” レオは気がついた。これはキスマークだ。 「シノブ、これ・・・」 そう言いながらキスマークをそっと触る。シノブはガバッと体を起こした。その顔は真っ赤だ。 「これ、なんでもない!」 シノブの目は涙目だ。 「何でもないわけないだろ。お前泣いてるじゃん」 「なんでもないよ。揶揄われただけだよ」 「お客さんに?」 シノブは首を横に振った。 「先輩?」 「・・・・・」 「言えないなら、無理に言わなくてもいいけど・・・」 レオはそれ以上聞けなかった。目の前のシノブはまだ涙目だ。レオはシノブを抱き寄せた。レオに体を持っていかれ、ソファーにレオを押し倒す形になった。 「レオ君?」 「シノブ、そのまま黙って。俺、今、気持ちの整理してる」 嫉妬にも似た感情と、ショックで混乱している自分を整理するので精一杯だ。 「うん」 そう言って、シノブはレオに体を預けたまま黙った。 5分くらいの沈黙。 「シノブ。何があったかわからないけど、嫌な事されたり、何か困ったことがあったら、必ず俺に言えよ。俺が守ってやるから。まだ頼りにならないかもしれないけど、頼ってくれよ」 シノブはその言葉を聞いて、またドキドキしている。 「シノブ?起きてる?」 シノブはレオの胸に顔を伏せたまま、縦に振る。 「今顔見せれない。僕恥ずかしさで顔真っ赤だと思う」 そんな可愛いことを言う。レオは、完全に気がついてしまっていた。 ”俺、シノブのこと好きなんだわ” あのモヤモヤした気持ちもすっかり無くなっていた。そう自覚したら、体は素直に反応する。レオの中心はまた熱くなってきている。 「シノブ、眠かったらまたベッドで寝ていいよ。落ち着いた?」 「うん。レオ君、今日は朝から学校なの?このまま、一緒に寝よ。なんか落ち着くから」 「え?・・・・学校は今日は土曜だからないけど・・・」 「じゃあ、一緒に寝よ」 そう言って、起き上がる。シノブはレオの手を引いてベッドに倒れ込んだ。 「おいおい、シノブ。カーディガンは脱げよ」 「うーん。脱がして」 「お前、いちいち可愛いの、罪だな。俺以外に隙見せるなよ」 「んーー?何ー?」 もうシノブは半分夢の中だ。レオはシノブのカーディガンを脱がせて、布団をかけた。レオの手をシノブは離さない。もうすでに寝息を立てている。 「ほんとに、厄介だよな。こいつ・・・」 そうつぶやいて、レオはシノブの横で寝た。

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