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水曜日 その1

水曜日の朝10時。レオは親父を叩き起こした。 「おい!!親父!!そろそろ起きろって!!」 「んあぁ?もうそんな時間か?」 「朝10時だよ。今日はお袋のところに帰るんじゃなかったのかよ?」 「おう。今日は帰るぞ。愛しのかなこに会いに帰る〜」 「じゃあそろそろ起きろよ!」 レオの親父の嵐はボサボサの頭を掻きつつ、大きなあくびをしながら起きた。 「レオ、腹へった。何かコンビニで買ってこい」 「わかったよ、おにぎり?サンドイッチ?どっち?」 「ん〜〜サンドイッチかな」 「わかったよ。他に欲しいもんない?」 「ない。あ、コーヒー!」 「それは知ってる」 「金はその財布から抜いてけー」 「はいはい」 そういうと、レオは近くのコンビニに向かった。 スマホを見ると、ラインが入っている。 ”レオ君おはよ。今日は二日酔いじゃありません。  ちゃんと夕方4時にいくからね” かわいいメッセージが入っている。レオはシノブにかわいいスタンプを送った。すぐに返信が返ってくる。キャラクターがお尻を振って踊ってるスタンプだ。それを見ながらニヤニヤしているレオだった。 「親父、たまごサンドと、ハムサンドどっち?」 「俺、たまご」 「足りなければ、カレーパンも買ってきた」 「おお!気が利くじゃん。カレーパン好きなのよく覚えてたな」 「昔お袋が朝からカレーパン出してたじゃん」 「そうだったかな。かなこちゃんに会いたいー」 「はいはい。それ食べたら帰って。お袋にもよろしく言っといてよ」 「お前もたまには帰ってこいよ」 「うん。そのうち」 インスタントのコーヒーをマグに入れて、お湯を注ぐ。親父の前に差し出す。 「レオ。お前、昨日の話、本気でするなら、真剣にやれよ。俺は止めないけど、あいつらバンドの命運もかかってる話だからな。中途半端な覚悟でするなよ。俺が言えるのはそれだけ」 「うん、わかってる。昨日メンバーと話しして、楽しかったし、嬉しかった。だから、また今週末にでも会って、一緒に演奏してみることになったよ。セッション的なライブらしいけど」 「おう、そうか。ミュージシャンで食っていくのは、なかなかしんどいぞ。俺が言うんだから間違いないからな。やるなら覚悟決めろよ」 「うん、わかってる。兄貴たちが音楽やらない理由もそれだろ?だから、ちゃんと考える」 「おう。わかってるならこれ以上は言わないが、とりあえず、真剣に考えろよ」 「わかった・・・」 「じゃ、これ食ったら、愛しのかなこちゃんのとこに帰りますかー」 そう言って、レオの親父はボサボサの髪を結び、ギターを持って出て行った。

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