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金曜日 その3

時間は22時を過ぎたところだ。 長身のジャンはベースを抱えて、ドラムのコウは手ぶらで連れ立って、Bitterに向かった。 JACKPODからBitterまではタクシーで10分くらいだ。面倒だと言うことで四人でタクシーに乗った。 Bitterに着くと金曜の夜ということもあって、まあまあ賑わっていた。カウンターに霧島と明石と吉木が並んで飲んでいる。 そのすぐ近くのテーブル席が空いている。シノブ達はそのテーブル席に座った。今日は珍しく、女性バーテンダーが入っている。シノブは知らないスタッフだ。メニューを持ってきた。 「ご注文をお聞きします」 「えっと、僕はジントニック、あとは・・・」 「俺はモスコミュール」 「あ、俺もモスコミュール」 「うーん。俺もジントニックでいいや」 「ジントニック2つのモスコミュール2つですね」 そう言って、女性スタッフは下がって行った。すかさず席に吉木がやってくる。みるみるうちにレオの機嫌が悪くなる。シノブはレオの手をテーブルの下で握った。 「吉木さん、偶然なんですが彼ら、今度のアニメのエンディングテーマ決まってるんですって!」 シノブが、メンバーを軽く紹介していく。 「え??まじで?探偵Rのやつ??すごいねー。なんか縁があるね〜」 そう吉木はいいながら、レオの顔を見た。 「はい。俺はまだサポートなんですけど、偶然そうみたいです」 不機嫌そうにレオが答える。 「ふーん。シノブ君のお友達だよね?名前は何ていうの?」 「彼はレオ君で、僕の・・・」 までシノブが言って、言い淀んだときに、ジャンが 「彼氏だよね〜」 あっけらかんと言った。 カウンターに座っていた明石と、霧島、そして、マスターまでもが顔をこちらに向けた。 「いいじゃんもう隠しても仕方ないし。僕もゲイだし・・・」 こういう時に普通に言えてしまうジャンは凄い。そこら辺がハーフの感覚なのだろうか?それとも国際感覚??後ろで、霧島がくくくっと笑っている。 「シノブ君。おめでとう」 低い声で霧島が言った。その言葉に明石も目を丸くして、 「ああ。うん、おめでと・・・」 つられて言う。 「参ったな。そんなにあっけらかんと言われると、もうなんて言うか・・・」 そこまで吉木が言うと、 「ラブには勝てないのだよ!ラブには!」 とまたジャンが言う。 そうこうしている間にドリンクが運ばれてきた。飲み物が揃ったところでまた、霧島が言う。 「シノブ君、いろんな意味で、乾杯!頑張れよ!」 「カンパ〜い」 ジャンが明るく言ったものだから、みんな笑顔になった。 その後フードを頼んで、GreenEyesの二人といろんな話をした。店内はだいぶ静かになってきていた。ジャンはあれから吉木に捕まって、いろいろ話し込んでいる。それに明石先生も入ってずっと話をしている。コウさんは、さっきの女性バーテンダーと音楽談義で盛り上がっている。どうも前コウさんがしていたバンドのファンだったみたいだ。シノブは霧島先生の横に座った。レオもついてきた。 「先生、僕、今が幸せです。なんだかこんなにいきなり色々動いて、この二週間毎日ぐるぐるです」 「シノブ君。運命が回り出すときは、そんなもんだよ。僕らの若い頃にもそう言う時期はあったし、それで掴んだ縁は、今も残ってる。なあ、マスター」 「はい。そうですよ。この前のシフト入ってもらった時にもいいましたが、シノブ君、今とても輝いてますよ。男の子に言うのはおかしいけれど、シノブ君きれいになりましたね」 「綺麗??あんまり褒めないでください・・・恥ずかしいです」 はははは・・と声を上げて霧島が笑った。 「君がレオ君ですね。先日は迎えにきてもらって、申し訳なかったですね」 マスターがレオに言う。 「いえ、シノブに何かあれば、いつでも言ってください。この前、圭吾さんにもお世話になったんで、ほんとすみません」 その会話を横で聞いて、シノブはますます恥ずかしくなる。 「いい彼氏でよかったじゃないか。シノブ君」 霧島が優しい目でシノブを見た。 夜は更けていく。夜中の2時を超えた。 「レオ君、そろそろ、僕帰るね〜」 ジャンが言いに来た。 「帰ってお肌のお手入れして、ダーリンと電話しなきゃだから〜」 もうすっかりゲイを隠さない。 「じゃあ俺らもお開きにしようか。あっちも全部これで」 霧島がそう言って、またカードを出した。 「え!先生、バンドメンバーも連れてきちゃったのに、それは申し訳ないですよ。割り勘にしましょう」 「シノブ君、いいんだよ。今日は僕も気分がいいからね〜。それに彼らも、今度の作品の関係者じゃないか。俺が一番おじさんだから、今日は俺に花持たせてよ」 「ええ・・・でも・・・」 シノブが躊躇していると、マスターが 「いいんですよ。霧島は奢りたいんですよ。シノブ君とレオ君のお祝いみたいなもんだと思って受け取ったらいいんですよ」 「え!じゃあ、先生、今度、またここで三人で飲みましょう。レオ君も一緒に」 「ふふふふ。いいよ。また今度ゆっくりな」 レオはそのかっこいい会話を聞いて顔が赤くなっていた。 「ありがとうございます。ご馳走になります」 そうレオは言って一礼をした。 「ささ、帰るぞー!」 霧島が声を掛ける。 「帰りはそれぞれ大丈夫かー?」 「はーい」 みんなが答える。 店の外に出て、それぞれがタクシーに乗り込む。 キッチンにいた圭吾も見送りに顔を出した。 「レオさん、先日はどうも!」 「あ!圭吾さん」 「聞こえてました。おめでとう。よかったです、うまく行って」 「はい。まだまだ、心配ですけど・・・とりあえず」 「小鹿ちゃんですもんね・・・。頑張って。店ではマスターと見張ってますから!」 そう圭吾は言って店内に戻っていった。 レオは、シノブとタクシーに乗った。今日はこのままシノブの家に泊まる。明日は土曜で学校もない。目まぐるしい1日で、レオもシノブも疲れ果てていた。二人は部屋に入ると泥のように一緒に眠った。

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