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第一章・7

 自分専用のアトリエからスケッチブックを持ち出し、研悟は素描を始めた。  描くのは、心路の姿。  楚々として、どこか影のある彼は、思い出しても美しかった。  そして、二枚目に彩人を描いた。  頭に浮かぶのは、無表情な顔。  それでも絵具をいじる時の彼の目は輝いていたし、絵を額に入れた時の頬は緩んでいた。  可愛い子だった。  出来上がった二枚の絵。 「これが、どんどん増えて行くといいな」  そして、いつかは直にモデルになってもらって、油絵で描いてみたい。 「宮崎さん、また来てくれるかな。だといいな」  こんな胸のときめきは、久しぶりだ。  両親を亡くし、青春時代は灰色だった。  絵を描くしか能のない自分を呪いながら、それでも描き続けていた。  心路は、そんな研悟の元に現れた、遅い青春のきらめきだった。

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