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第二章・4
「これはすごい!」
「がんばったね、彩人」
彩人の絵は、応接室から見える庭の花々を描いたものだった。
全部を指で描いているので、独特の伸びや擦れが絵に味わいを与えている。
さらに複数の絵具が相まって、絶妙の混色ができている。
「傑作ですよ、宮崎さん。まるでブランブリッドの作品みたいだ」
著名な画家の名を聞いて、心路は恥ずかしくなった。
(関先生ったら、私を喜ばせようと思って)
「子どもが指でいたずら描きしたものです。あまり褒められると、恥ずかしいです」
だが、研悟の顔は引き締まったままだった。
「彩人くんの才能を、ぜひ伸ばしたい。子ども向けの絵画コンクールに、作品を出してみませんか?」
入賞すれば、それが彼の自信にもつながる、と研悟は考えていた。
「あの、先生。本気で……?」
「本気です!」
研悟の目は、きらきらと輝いている。
ちらりと、心路は彩人の絵を見た。
(ただのぐちゃぐちゃに見えるんだけど……)
だが、関先生がそこまで熱心になってくれるのなら、と考えを改めた。
「よろしくお願いします」
「はい!」
当の彩人は、絵具のついた手で、もぐもぐクッキーを食べていた。
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