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第二章・5
今度の絵も額に入れてもらえて、彩人はご機嫌で心路の運転する車に乗っていた。
「よかったね、彩人」
「うん」
声を出して、返事をした。
これは相当、ご機嫌に違いない。
「彩人、関先生のこと、好き?」
「好き」
おおぉ、と心路は胸の内で感嘆していた。
あの彩人が、外の人を好きになるなんて!
「私も、先生の事が好きだよ」
心路の言葉に、彩人は目をぱちぱちさせた。
「先生と、結婚するの?」
「え!?」
「ねえ、結婚するの?」
「し、しないよ! 何を言ってるの、もう!」
ふうん、と彩人は再び自分の絵を眺めた。
「結婚すればいいのに」
彩人の何気ない一言が、心路を動揺させていた。
(素敵な人だな、とは思うけど! 結婚だなんて、そんな!)
しかし人間は、図星を指された時ほど慌てるものだ。
胸に抱くほのかな恋心に、心路は気づかないふりをした。
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