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第二章・6

 ハンドルを握る手が、汗ばむ。  とくとくと、鼓動が速くなる。 (同じα男性なのに、凌也(りょうや)さんとは全然違う)  家を出てしまったパートナー・凌也のことを心路は思った。  自信家で、イケメンで。何をするにもスマートにこなす男だった。  そんな彼を慕う人間は大勢いたので、恋人に選ばれた時には嬉しかった。  結婚を申し込まれた時には、天にも昇る心地だった。  だがしかし。 (結婚してから、負の部分が見えてきたんだよね)  凌也は、家事育児いっさいに手を出さなかった。  所帯じみた自分はイヤだ、という、ただそれだけの理由で。  確かに結婚しても、凌也は凌也だ。  今まで通り、いつも通りに、自信家でイケメンで。何をするにもスマートにこなす男だった。  そんな彼を慕う人間は、今まで通り大勢いた。  やがて凌也は、家庭を顧みず外で遊びまわるようになっていった。  挙句の果ては、新しい恋人を作り帰らなくなってしまった。

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