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第二章・7
研悟は、そんな凌也とは真逆の魅力に満ちていた。
どこか危険な香りのする凌也と違い、ただ安心感をもたらしてくれる。
彩人を見る目も、まるで違う。
ただ愛嬌が無いというだけで、まるで無視していた凌也。
だが研悟はそれに向き合い、根気強く向き合ってくれる。
そして、心路に対する表情も豊かだった。
低く柔らかな声、温かな笑顔。
手ずからクッキーを焼く、家庭的な一面。
そうかと思えば、彩人の絵に対する情熱。
(ダメだよ。私はまだ、凌也さんと離婚はしていないんだから)
それに、心のどこかで彼がまた戻って来るのではないかと期待している。
『先生と、結婚するの?』
彩人の言葉が、いつまでも耳から消えない。
(お付き合いもしてないのに、結婚なんか!)
それに、関先生は私のことを、ただの生徒の保護者としか見ていないかも。
そんな風に、一生懸命思い込んだ。
心に吹き込んできた爽やかな風に、気づかないふりをした。
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