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第三章・2

「宮崎さんも、さあ!」  ゴーグルとフィンを貸してはもらったが、その場に立ったままの心路の腕を、研悟は引いた。 「わ、私は泳ぎは苦手で」 「フィンがあれば、上手に泳げますよ」  恐る恐るバタ足をする心路の手を取って、研悟は導いてくれる。  顔をあげると、そこにはすっかり泳ぐのが巧くなった彩人がいた。 「ねえ、見て。海の底できれいな貝殻拾った」 「すごいね、彩人」 「パパもおいでよ。あっちに、たくさんあったよ」  夢中になって泳ぎ、あっという間にお昼になった。 「二人でシャワーを浴びてきてください。僕は、昼食の準備をしますから」 「そんな。私も手伝います」 「いいから、彩人くんの傍に居てあげてください」  キャンピングカーのシャワールームで、心路は彩人と体を清めた。 「彩人、楽しい?」 「うん」  相変わらず表情は乏しいが、その口元は微笑んでいる。  そんな彩人の変化を、心路は嬉しく思った。

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