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第三章・3

「海と言ったら、パエリアだな!」 「どうして?」 「海の恵みが、たくさん入っているからだよ」  アサリにイカ、エビ。  市販のシーフードミックスではない、本格的な魚介に心路は驚いた。 「これ、関先生が?」 「料理と絵を描くことって、意外と似てるんです」  芸術家らしく、盛り付けもテーブルセッティングも凝っている。 (何だか私、恥ずかしいな……)  仕事で遅くなる時は、弁当やレトルトで済ませることの多い心路だ。  今度から、できるだけ手料理をがんばろう。  そう心路に思わせる、研悟の料理だった。 「さ、熱いうちにどうぞ」 「いただきます」  パエリアは、頬っぺたが落ちるほどおいしかった。  副菜は、ズッキーニのカルパッチョに、サラダチキン。 「なにこれ。キュウリ?」 「ズッキーニだよ」 「……おいしい」  微笑ましい研悟と彩人を見ながら、心路は胸がチクリと痛んだ。 (凌也さんも、こんな風に彩人に接してくれていれば)  そしたらこの子も、ここまで頑なな心になりはしなかっただろうに。 「宮崎さん、どうしました。お口に合いませんか?」 「え!? いいえ! すごく美味しいです!」  慌てて熱々のパエリアを頬張ったので、舌を火傷してしまった。
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