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第三章・6
何て素直な、楽しい絵だろう。
研悟は、彩人を褒めたたえた。
「すごいよ、彩人くん。心の中にあったことを、たくさん描いたんだね」
「うん」
とても、無数の円を描いていただけの子とは思えない。
それほど彩人の絵は、活き活きと賑やかだった。
「パパ、僕の絵、上手?」
「上手かどうかは解らないけど、すごく素敵だよ」
その返事に満足したのか、彩人は心路にしがみついた。
そして。
「先生の絵も、見せて」
「僕の絵か!?」
まだ途中なんだけどな、と言い訳をしながら、研悟はデッサンを披露した。
「……」
「どうかな。僕の絵は、上手かい?」
「パパは、こんなにカッコ良くないよ」
「ひどいこと言うなぁ」
心路は、笑いながら研悟のスケッチブックを手にした。
「確かに、私はちょっとお澄まししすぎましたね」
では、また描き直さなくては、と研悟は再び心路をモデルにする口実を見つけた。
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