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第四章 好きです

「彩人くん、どこか行きたいところはある?」 「海の次は、山」 「セオリーだな!」  そんなやり取りを経て、彩人と研悟、心路は山に来ていた。 「富士山かと思った」 「富士山か。それは今後の楽しみにとっておこう」  標高600m程度の、初心者向けの山を三人は散策した。  気持ちの良い、森林浴だ。 「空気がおいしいですね。気持ちがいいです」 「山の空気は、お好きですか」 「空気がおいしいの? 味がするの?」  彩人は鼻をひくひくさせて、木々の息吹を吸っている。 「どう? おいしいかな?」 「解んない。でも、街の空気と匂いが違う」  ひんやりとした木立の中に、ヤマツツジの花を見つけたり。  落ち葉の上に、小鳥の落とした羽を見つけたり。  海とは違った魅力を、彩人は山に感じていた。 「先生、これ」 「カケスの羽根だ。美しいな」  青に白と黒の縞の入ったカケスの羽根は、彩人の今日一番の収穫になった。

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