25 / 70
第四章・4
「いけませんか?」
「いえ、でも、その」
心路の胸には、薄情なパートナーが現れていた。
感情に乏しい彩人を、可愛げのない子だと罵った男。
しまいには、俺の子じゃないと言い出した男。
新しい恋人の元に走り、連絡も寄こさない男。
あんな男に、もう義理立てする必要はないのではないか?
(私だって、幸せを掴みたい)
今、現に幸せなのだ。
彩人がいて、関先生がいる。
それだけで、胸がぽうっと温かくなる。
自分の気持ちに整理をつけ、心路は研悟に返事をした。
「私と付き合って、くださいますか?」
「ありがとう。ありがとう、宮崎さん!」
立ち上がり、研悟は心路に駆け寄った。
手を取り、情熱的なまなざしで彼を見た。
「心路さん、と呼んでも?」
「……はい」
「僕のことも名前で呼んでください。先生、なんて堅苦しいことは言わないで」
「じゃあ、……研悟さん」
研悟の心が、震えた。
喜びに、乱れた。
ともだちにシェアしよう!