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第四章・5

 彩人は昼寝から覚めると、絵を描き始め……る前に、微妙な空気を感じ取った。  傍にいて、見守ってくれる二人の大人。  パパと、関先生の間に、今まで無かった雰囲気が漂っている。  だが、それはイヤなものではない。  むしろ、心地よい。 「パパ。僕が眠ってる間に何かあった?」 「え? う、ううん。何にもないよ!」  慌ててごまかす心路に首を横に振ると、研悟は彩人に向き直った。 「実は僕が、心路さんに付き合って欲しい、って言ったんだ」 「へえ」  心路は、不安になった。  これで彩人が研悟さんを嫌いになったりしなければよいが、と気を揉んだ。 「パパは? 先生と付き合うの?」 「彩人がいい、って言えば、お付き合いするよ」  そんなの決まってる、と彩人はうなずいた。 「いいよ。僕がイヤだ、っていっても、どうせ付き合うでしょ」  だから、二人は堂々とするべきだ、と彩人は言う。 「参ったな。子どもに諭されるなんて」 「ごめんね、彩人」  後はもう、彩人は自分の世界に入り込み、もくもくと絵を描き始めた。

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