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第四章・6
嬉しいな。
楽しいな。
もしかして、パパと研悟先生は結婚するのかな?
そしたら、先生は僕のお父さんだ。
素敵な新しいお父さん。
研悟お父さんと一緒に、いろんな所へ行きたいな。
そして僕は、好きな絵をたくさん描くんだ。
彩人の指は、自在に動く。
動いて、素敵な線を描く。
夢中で描いていると、時の経つのを忘れてしまう。
絵を描き上げ、彩人が頭を上げた時には、夕暮れの気配が漂っていた。
「あれ? 研悟先生は?」
「車を取りに、下へ降りて行かれたよ」
今日もきれいな絵を描いたね、と心路は彩人に頬を寄せた。
「これがスダジイで、こっちがヤマツツジ。これがカケスの羽根で……」
彩人の説明を聞きながら、心路はうなずいた。
ただの円を並べていた頃とは、全く違うにぎやかな絵だ。
(研悟さんが、彩人の心に風を送り込んでくれたおかげだよね)
そして、これまでにないくらい、自分も彩人と密に過ごす時間が取れていることに気づかされた。
(彩人のこと、凌也さんのせいにばかりしてたけど、私もいけない部分があったみたい)
もっと彼に、真正面からじっくりと向き合うべきだったのだ。
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