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第五章 触れ合い
海に山、草原に竹林。
研悟は、様々な自然環境に彩人を置いた。
手作りのお弁当やデザートを持って。
キャンピングカーで、出来立ての料理を振舞うこともあった。
三人で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり。
そうやって遊んでは、彩人に描く気が湧きおこるのを待った。
今日は、沢で魚釣りだ。
キャンピングカーでやって来てはいるが、研悟はわざわざ焚火をたいた。
「魚が釣れたら、焚火で焼いて食べよう。頬っぺたが落ちるほど美味しいぞ!」
仕掛けを付けて、彩人へ竿を渡す。
長靴の彩人は、恐々と沢へ入って行った。
「僕が流されたら、研悟先生助けてよね」
「任せとけ。僕は下流で釣ってるから、すくい上げてやるよ」
ヒトを魚みたいに、とぶつぶつ言っていた彩人だったが、魚が釣れ始めるとご機嫌になった。
「ほら、また釣れたよ!」
「小さい魚は、逃がしてあげて」
大きな魚は、石で囲った生け簀(いけす)へ放した。
三人で食べられるだけの数が獲れたら、おしまい。
研悟は、命を無駄にしないことを、そうやって彩人に伝えた。
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